アスリノ株式会社 代表取締役 三浦奈緒子 氏 (前列右)
アットインテリア株式会社 代表 竹川倫恵子 氏 (後列右)
株式会社VanVision(ヴァンヴィジョン) 代表取締役 水谷千砂子 氏 (後列左)
CLASTYLE DESIGN(クラスタイルデザイン) 主宰 山本友加里 氏 (前列左)
ドリームインテリア 主宰 加藤英里 氏 (前列中央)
インテリアに携わる事業者としての”悩み“、コーディネーターの地位向上やコミュニティの拡大にむけて
――皆さんは各種の資格を活かして活動されています。まずは竹川さんに伺いますが、名刺には「インテリアディレクター」とあります。ご自身では「何屋」であると定義されているのでしょうか。また、インテリアコーディネーターの現状と地位向上のために必要なことについても、お考えのある方はお聞かせください。
竹川 私は肩書をインテリアコーディネーターにはせず、経験を軸に「インテリアディレクター」と名乗っています。理由はコーディネートに加えて、コンセプト設計や企画、発信やPR、マーケティングまで一気通貫で関わる場面が多いからです。ときにコンサルティングまで踏み込み、インテリアに関わる事業を回せる状態をつくる支援を行っていきます。
山本 私は「空間プランナー」と名乗っているのですが、それは一般の方には「インテリアデザイナー」と「インテリアコーディネーター」の違いが伝わりにくく、「インテリア」という言葉を付けると提供価値の幅が誤解されやすいと感じたからです。間取りづくりから伴走し、内装・造作・既製家具までを統合的に提案するスタイルを示すには、「空間プランナー」が適していると考えて、この名称にしました。
三浦 インテリアコーディネーターの資格については、取得のタイミングを逃してしまいましたが、その分、日々の仕事の中で実践的な力を磨いてきたという自負があります。現場での経験が、今の仕事の土台になっていると感じています。これまであまり肩書きにはこだわらずにきましたが、自分自身を表すとすれば、トータルリフォームプランナーのような立ち位置かもしれません。
加藤 私は「インテリアコーディネーター」と名乗ることが多いですね。「インテリアコーディネーター」という言葉はこれまで長く使われてきた言葉なので、一般的な認知度を踏まえ、私自身は「インテリアコーディネーター」を基本に据えています。
水谷 名刺には「インテリアコーディネーター」と記していますが、実はずっと迷いがあり、「ほかにしっくりくる呼び方はないのか」と考えてきました。世の中で“人気コーディネーター”と呼ばれる存在が、一般の方からどう見られているのかも肌感覚では掴みづらいままでしたね。私自身は専業主婦から資格取得を目指した経緯があり、「インテリアコーディネーターとは、おしゃれに家を整えてくれる仕事に違いない」と思ったのが出発点でした。
その後、実務を重ねるなかで、想像以上に幅広いことができると実感しました。ここまで踏み込むなら肩書きを変えるべきではと考えた時期もありましたが、最終的には「インテリアコーディネーター」で良いと今は考えています。理由は明確で、私は「デザイナーではない」という立場を徹底しているからです。作品を作る人というより、暮らしや住まい、予算に寄り添い、依頼主にとって最良の選択肢を一緒に組み立てていく役回りだと捉えています。肩書きだけでは伝えきれない面もありますが、仕事観としては今の呼称に納得しています。
山本 どのように名乗るかは、なかなか難しいですよね。「インテリアコーディネーター」は家具店にもハウスメーカーにも在籍されていますし、我々のようにフリーで活動する人との違いがどこにあるのか、一般の方は判別しづらいと感じます。またインテリアコーディネーターの肩書を持っている人たち自身が「自分は何屋なのか」と迷うことも少なくないと思います。私たち自身が迷っている状況なので、初見のお客様が分かりづらいのも当然かもしれません。
竹川 タイプ別に整理した「マトリクス」を作れたら伝わりやすくなりますよね。例えば八つほどのカテゴリーに分けて、「この系統はここが得意」というように説明できれば、依頼先を選ぶ際の手がかりになるはずです。
――それぞれ、多岐にわたりご活躍されていますが、コーディネーター業を行う上での悩みなどについてはいかがでしょうか。
加藤 ファミリー物件への対応ですかね。私自身に子どもがいないため、生活者視点の細部で説得力が弱くなる場面があります。単身男性や二人暮らし、ペットと暮らすお客様には深く寄り添えますが、子育て世帯には専門性の高い方をご紹介した方が良い場合があります。とはいえ、知人ネットワークだけではタイミングが合わないこともあるので、問い合わせをくださった方に最適なコーディネーターをスムーズにお繋ぎできる仕組みを整えられるといいなと思いますね。
水谷 創業期の話になりますが、資金調達の要領すら掴めず、資金ショートが即“終わり”に直結するように見えていました。実際には、地道に実績を積み上げていれば融資の選択肢はあり、伴走してくれる機関も存在します。そうした知識にアクセスできる相談の場があるだけで、継続可能性は大きく変わりますよね。
このような仕事を独立して手掛けていくにあたって、フリーで一から構築するのは負荷が大きく、仕入れ可否が収益を左右します。したがって、交渉の進め方や仕入れの土台を学べる仕組みが広がるといいなと思いますね。そうなれば、新規独立のハードルは下がるはずだと思います。
竹川 個人というよりは全体的な話になるのですが、悩みの核心は、コーディネーターの評価とフィー水準にあります。現場の作業量は多岐にわたり、工数のわりに報酬が低くなりがちです。建築家は設計料として明確に頂戴できる一方、コーディネート費は「込み」に見なされやすい傾向が続いています。だからこそ、私たち自身が価値を言語化し、妥当な価格で受注する文化を育てたいですね。
コーディネーターの仕事が暮らしにどんな豊かさをもたらすかを、業界内外に伝え続けることも重要だと考えています。フィーは必要経費ではなく、成果への対価です。この理解が広がらなければ、専門職として持続的に食べていくことは難しくなりますからね。
水谷 ビジネス交流会への参加が苦手な方もいらっしゃいますが、私はもう8年在籍しています。いま紹介だけで仕事が回っているのは、その場に居続けた積み重ねがあったからですね。コロナ後に軸の仕事を手放し、「これからどうするか」を模索していた時期には、同業以外の経営者の方から率直な助言もいただけました。最初は提案フィーを3万円に設定していたところ、「その価格では紹介できない。最低でも10万円からに整えてください」と背中を押していただいたんです。
その体験で気づいたのは、「自分の価値は自分で定義し、上げていく必要がある」ということでしたね。根拠のない罪悪感で価格を抑えるのではなく、それを超える成果を提供すればいいと腹を括れました。以降はより丁寧な提案を心がけ、満足していただける結果を目指すように取り組んでいます。価格に見合う価値を出せば、スキルも評価も自然に上向きますし、お客様の満足にもつながりますから。
――家具メーカー各社などへのご要望はありますか。
加藤 私の場合、メーカー直の取引もあれば、商社経由が必須というケースもあります。個人事業主という立場も影響するのか、前払いでの対応が前提になることが多く、お客様から100%お預かりして仕入代金を支払っています。それでも直取引を断られる場合は、FLYMEeさんや藤栄さんを経由します。興味深いのは、直より商社経由の方が、掛け率が良いことがある点です。メーカーとしては個別対応の負荷や社内運用の問題があるのだろうと理解しています。条件が見える化されていれば、最適なルートを選びやすくなりますね。
竹川 中間を経ずに連携できれば、私たちは実質的にメーカーの外部営業のように動けます。コーディネーターを窓口とした代理店契約が広がれば、メーカー側の販路拡大にも直結しますね。
水谷 コーディネーター向けの卸条件を可視化していただけると助かりますね。「このグループの登録コーディネーターには何掛けで提供」と明示していただければ、私たちは提案の選択肢を増やせます。メーカーにとっても販売ルートが広がりますし、双方にメリットがありますよね。商社経由が前提なら、適用掛け率を事前に開示していただけるとありがたいです。
日本には“知る人ぞ知る”優れたメーカーが数多くあります。ところが、コーディネーターがネットで見つけても取引条件が分からず、定価販売で流すか、お客様に直購入していただくしかない状況に陥りがちです。本来はプロとして仕入れて提供できるはずなので、情報の整備と共有が進むと、現場は一気に動きやすくなります。
――最後に、それぞれの今後への抱負や、仕事への考えなどを改めてお聞かせいただけますか。
加藤 私自身のミッションは「お客様に新しい世界を知って頂くこと」です。打ち合わせで最も楽しい瞬間は、お客様が「そんなオーダーができるんですか?」「このようなブランドの家具は知らなかったです」と目を輝かせる場面ですね。最初は少し警戒されていた方も、未体験の提案がヒットすると、一気に前向きになってくださることが多いです。
私のクライアントは、個人の男性で企業を立ち上げて活躍されている方が比較的多い傾向があり、仕事に比重が寄り、住まいに意識が向きにくい方もいらっしゃいます。極端な例では、気に入る椅子が見つからず、家に椅子が一脚もないまま過ごしていた方もいましたし、引っ越しを機に「さすがに椅子が必要だ」と考え、秘書の方が検索して私に辿り着いたというご相談もありました。好きなコーヒーや紅茶を淹れて楽しみたい、ギターを弾きたいというご要望を伺い、ショールームをご案内したところ、「いつもこのお店の前を通っていたのに、知らなかった」と驚かれました。こうした体験価値を提供できたとき、私の存在意義を実感します。
私は必ず「インテリアを整えたら何をしたいですか」と伺うようにしています。困りごとを解決するために問い合わせをくださるのは前提ですが、プロに依頼する背景には「自分の想像を超える提案に出会いたい」という期待が潜んでいるはずです。その期待に応える覚悟があるかどうかで、掛けていただけるご予算も自然と変わってきます。
馴染みの店だけで選ぶと、どうしても既知の範囲に閉じこもりやすくなります。知らなかった選択肢と出会った瞬間の高揚感を積み重ねることで、日々の暮らしが少しずつ豊かになっていきますし、その変化が仕事のパフォーマンスにも良い影響を与える可能性があります。表に出して強調するわけではありませんが、心の中ではそう願いながら伴走しています。
三浦 これまで、お客様の暮らし方やご家族の関係性に深く関わりながら、、長くお付き合いする案件が多かったので、住み替えや家族構成の変化、人生の節目に伴うリフォームにも寄り添ってきました。フィーリングが合わなければ続かない世界ですし、信頼関係を丁寧に積むことが何よりも大切だと感じています。
主軸は変わらず、居住中の住まいや購入直後の物件に対するリフォーム・リノベーションを中心に取り組んでいきます。女性ならではの視点を活かしながら、細部にわたる現場対応から設計、アフターケアまでを一貫して管理する体制を整えており、意思決定の速さや柔軟な対応力を強みとしています。もちろん、専門的な視点を相互補完できる仲間と相談しながら進めておりますが、より信頼できる設計者や施工パートナーと知見を持ち寄り、より良い選択肢をお客様に提示できる体制づくりを、今後の課題として捉えています。
新築や購入物件の入居前リノベーション、居住中の改修など、案件のスパンはさまざまです。新規開拓については、会社の特徴をどう打ち出すかを模索中ですが、これまでのご縁を大切にしながら、実績から次のご紹介につながる流れを太くしていきたいと考えています。1件ずつ確実に成果を出し、自然な口コミの連鎖が生まれることが理想ですね。
山本 独立後は、ありがたいことに前職のご縁で図面作成やマンションギャラリー関連の案件からスタートしたのですが、いつまでも「外注さん」という受け身な立場のままでは限界があると感じていました。そして何よりせっかくフリーの空間プランナーになったのだから、「あなたに頼みたい」と言ってくださるお客様と出会いたい、という思いでビジネスを学び始めました。
そうして今は、間取り・動線と造作家具に加えて、既製家具や照明までを一気通貫でプランニングさせていただく体制を取ることができています。たとえお客様がネットで買うアイテムであっても、空間に入れば設計の一部ですから、そこまでしっかりと責任を持つのが私のスタンスです。
また最近は、家づくりを始める前の“価値観の整理”の必要性にも直面する機会が多くなり、まずは家族の温度感をそろえることが大切だと痛感しています。私のところに最初にご相談にいらっしゃるのはご家庭の奥様であることが多いのですが、その際ご主人様の温度感を伺うと「インテリアに何十万円もかける必要はないと思っているようで・・」などとご夫婦の足並みが揃っていない状況であることも正直多いです。
当初はサービスを小分けにして、奥様だけで進めるケースもありました。空間の仕上がりイメージを描いたパースを私は「未来予想図」と名付けているのですが、あるお客様はその内容に満足され、数か月後に「もう一度お願いしたい」と再依頼をくださいました。ご自宅の未来予想図を一緒に見たことで話すきっかけが生まれ、ご夫婦関係も前向きに動かれたそうです。「前回は私の思いだけでお願いしたけれど、今度は主人の思いも反映された未来予想図が見たい」とおっしゃっていたのがとても嬉しく印象的でした。
私は心の専門家ではありませんし、夫婦関係のコーチングができるわけでもありません。それでも、奥様が楽しそうに動き始めるとご主人の表情が柔らかくなったり、住まいが少し自分好みに近づいたことで、ご家族の空気が穏やかになったりする瞬間を見てきました。小さな変化が、良いきっかけになるのだと実感しています。
インテリアコーディネートのテクニックやスキルはもちろん重要です。ただ、ご家族のある方やひとり暮らしであっても「どんな価値観で、どう生きていきたいのか」を丁寧に汲み取ることが何より大切だと考えています。だからこそ、伴走型で進め、「インテリアを素敵にすることがゴールではないですよ」とお客様にお伝えしています。「家は人生のベースキャンプ」ですから、家は帰りたくなる場所、元気を取り戻せる場所になれば、仕事も勉強も家事も頑張れますよね。その価値観を広げていく道のりは長く感じることもありますが、諦めずに丁寧に積み上げていきたいと思います。
竹川 一般的なビジネス交流会では受注に繋がる縁も生まれますが、インテリアコーディネーター自体の母数が少なく、同業に出会える確率は高くありません。営業に割ける時間も限られるため、提携できる工務店さんやパートナー職種、同業者との接点は計画的に増やしたいところです。実際、建築家や整理収納の専門家とはつながりやすい一方、フリーのコーディネーターはなかなか見つからない印象でした。だからこそ、水谷さんとの出会いは大きかったですね。ご紹介の機会や新たなネットワークが生まれ、案件に結びつく関係性が着実に広がっています。
私自身の役割の重心は少しずつ変わってきていると感じており、自分が前面に出てコーディネートを担うより、同業の方々をつなぎ、案件に合わせて最適なチームを編成するサポート役に回る。そうしたネットワークづくりや運営に、性分としても適性があると感じています。今後は連携の輪をさらに広げ、個の強みを束ねて成果を最大化する体制づくりを進めたいですね。同業コミュニティも「横の挨拶」で終わらせず、実務と成果に直結するプロ同士のプラットフォームへという基盤づくりが進めば、個々の強みが活き、依頼主にも価値が還元されると考えています。
水谷 取引網については、前職時代の工務店さん・カーテン会社さん・家具店さんとの関係を退職時に丁寧に引き継ぎ、今も継続中です。そしてこれは心がけていること、心がけるべき要素だと思っているのですが、我々のようなインテリアの専門家が注意すべき点は、「プロの言葉が“唯一の正解”」のように響いてしまう場面です。実際、「本当は違うものが欲しかったのに『このソファが絶対良い』と言われて選んでしまい、暮らしの中で違和感が消えない」というご相談を耳にしたことがありましたが、あのような違和感をお客様にお持たせしてはいけないと痛感しました。私自身の家ではなく、お客様がこれから10年、20年と共に過ごす道具ですから、心から愛せるものを選べるように導くことがプロの責任だと考えています。
そのためにもインテリアのプロは、インテリアコーディネートの引き出しを広く持ち、特定分野だけ突出させるのではなく、全体の底上げを図る姿勢が欠かせません。今後もこの姿勢を大切にしながら、お客様への提案を充実させていきます。
――お忙しい中、多岐にわたりお話いただきました。
(聞き手 長澤貴之、佐藤敬広)
アスリノ http://asu-reno.jp/
アットインテリア https://at-interior.co.jp/
VanVision https://vanvision.co.jp/
CLASTYLE DESIGN https://clastyle-d.com/
ドリームインテリア https://dream-interior.jp/
【取材協力】
喫茶 晴龍
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