【インテリア業界人座談会2025】それぞれの持ち味で挑むインテリアの仕事──5人のインテリア実務家が語る独立・協業・価格設計の舞台裏(上)

アスリノ株式会社 代表取締役 三浦奈緒子 氏 (前列右)
アットインテリア株式会社 代表 竹川倫恵子 氏 (後列右)
株式会社VanVision(ヴァンヴィジョン) 代表取締役 水谷千砂子 氏 (後列左)
CLASTYLE DESIGN(クラスタイルデザイン) 主宰 山本友加里 氏 (前列左)
ドリームインテリア 主宰 加藤英里 氏 (前列中央)

事業内容、それぞれの独立背景について

――本日はお忙しいなかお集まりいただき、ありがとうございます。皆さんの仕事の内容や、インテリアコーディネーター資格などをどのよう事業に活かしているかを中心に、各々のお考えをお伺いできればと思います。まずは自己紹介を兼ねて、法人か個人か、手がけている領域も含めてお話しいただけますか。

三浦 法人のアスリノ株式会社を運営している三浦奈緒子です。前職では、都内のリフォーム会社に約25年間勤め、営業から設計、施工管理までをほぼ、一貫して担当してきました。個性豊かなお客様との案件が多く、毎回が完全オリジナルのリフォーム。現場で鍛えられる日々でした。

その経験を活かし、4年前に独立。現在は、図面作成や申請業務などは信頼できる外部パートナーと連携し、人とのつながりを大切に、現場の職人の方や工務店さんと丁寧に関係を築いてきました。ネットワークを活かして、プロジェクトごとに最適な体制を組んでいます。

案件の9割は住宅、要望に応じてオフィスや店舗も対応。打ち合わせから現場、アフターまで私が責任を持って伴走します。これまではご紹介経由が中心でしたが、今後は新規開拓も強化したく、直近では加藤さんと協業させていただきながら、提案領域と受託幅を広げていきたいと考えています。

水谷 VanVision(ヴァンヴィジョン)代表の水谷千砂子です。コーディネーター歴は23年目で、私は40歳まで専業主婦でした。コーディネーターの資格取得後に大手デベロッパーの業務委託コーディネーターとしてスタートしました。7年間でマンション購入者へのインテリア提案からモデルルームのデザインや設計変更などを幅広く経験し、13年前に独立・法人化しています。

現在のBtoCはご紹介ベースが100%。新築・リノベのお客様に対して、内装デザインから仕様決め、ショールーム同行、家具選定までをワンストップでサポートします。暮らしから逆算して計画するので、「イメージと違った」を防げるのが強みですね。加えて、多くのメーカーと直接取引があるため、家具の購入だけでも私経由の方がお得に整えられる点も評価いただいています。

BtoBでは、買取再販を行う不動産会社向けに内装デザインを提供。モデルルームで培ったペルソナ設計をベースに、地域性や時流に合った企画で“早く売れる”物件づくりを支援しています。小規模な店舗・オフィスのデザインも対応。従業員は私ひとり、業務は外部パートナーと連携して進めています。

竹川 法人のアットインテリアを運営している竹川倫恵子です。法人運営は現在7期目に入るところです。経歴としては、日本とイギリスでインテリアを学び、その後イケア・ジャパン株式会社に約14年在籍、インテリアデザインやマネジメント、マーケティングなどに携ってから独立しました。

今はエンドユーザーの住空間提案に加え、オフィスや民泊施設など法人向けインテリアデザイン、そしてホームステージング(モデル物件への家具一式のレンタル・設営)を一気通貫で請け負っています。あわせて、企業向けにホームステージングや民泊の立ち上げ・運用などのコンサルも実施。また今年度から株式会社コメリの外部取締役を務めております。社内にフル雇用のデザイナーは置かず、フリーランスと提携する形で現在4名ほどとチームを組んでいます。

山本 空間プランナーの山本友加里です。CLASTYLE DESIGN(クラスタイルデザイン)という屋号で個人事業主として活動しております。コンセプトは「人生の質を高める空間づくり」。お客様の価値観を起点に、①リノベーションの間取り計画、②造作家具プランニング、③色彩設計の3本柱でご提案しています。キャリアの前半は商業施設のデザイン会社で、マンションギャラリーやブライダル施設の空間を“売れる”視点で企画・設計。その後、出産を機に地元のリフォーム会社で約8年、リフォームプランナーとして勤めた後、独立しました。居住空間を単なる“住める箱”ではなく、“心が満たされる空間”にすることを大切にしています。

加藤 ドリームインテリアを運営している加藤英里です。個人事業主として活動しています。前職ではマンションのモデルルーム設計からスタートし、その後は商品企画や販売支援など、デベロッパー側(野村不動産さん)でも業務に携わりました。平面計画を設計事務所で描く段階から、販売担当と「どうすれば売れるか」を詰めていくという、つくる側と売る側の両面を経験しています。

現在のお客様は単身(特に男性)や二人暮らし、愛犬と暮らす方の比率が高め。ファミリーよりも、嗜好のはっきりした層に支持をいただいています。集客は基本的に自社サイト経由。近年はその層に響く発信へと絞り込みを強めています。

これまで、リノベーションの深い領域は経験が薄く、踏み込みきれない場面がありました。そこで本日ご一緒のアスリノの三浦さんと連携し、要望に応じてリノベも一気通貫で対応できる体制を整えつつあります。業務委託としては広報とCG制作で各1名と契約しています。

――さて、最初のテーマは「個人事業主/法人化の背景」です。皆さんが独立や法人設立に踏み切った理由、そして運営上の難所などについても伺います。まずは個人事業主の方からお伺いしていこうと思います。

山本 独立前はリフォーム会社に勤めていたのですが、「設計+施工」で請け負っている案件をこなすことがどうしても最優先になるため、照明やラグ、既製家具までお客様に寄り添いたくてもそこまでの時間は割けないのが実情でした。せっかく内装を整えても最後の“家具選定”の部分で仕上げきれない住まいを目にすることもあり、もどかしさを抱いていました。

そんな中、独立する直接の引き金はコロナ禍でしたね。最初は在宅化で現場が止まったものの、GW明けには「家に投資する」流れが一気に強まりました。リモートワークの都合から個別空間の需要も高まり、リフォームを急がれたいお客様も増えました。そして、思うように休みが取れない状況に自分を追い込んでしまったのです。

ちょうど二級建築士の学科に合格したタイミングで製図試験対策にも取り掛かりたかったのですが、勉強の時間が全く取れない。そこでふと立ち止まり「来年になったら自分の時間を思うように取れるのかな」と考えたら自信がありませんでした。そして最終的に夫から「いまの働き方では無理がある」と言われ会社を辞めることを決めました。転職も検討したのですが、千葉県在住ゆえ都内企業から距離を理由に断られた経験もあり、「じゃあ、自分でやるしかない」と独立することを選んだ次第です。

加藤 個人事業主として独立した理由は、再びインテリアの仕事に戻りたいと強く感じたことですね。約10年前に異業種で働いていた時期がありましたが、最終的に「やはりインテリアを仕事にしたい」と考えるようになりました。

デベロッパー所属の業務委託でエンドユーザー対応をしていた頃、「変わったものではなくて、普通のスタンダードなものでいい」と言いつつも「けれども何かしら、来客を驚かせるコーディネートにしたい」といった要望に応えたことがあり、あえて定番から一歩踏み出すコーディネートが評価される場面を数多く経験しました。しかしながらそのようなご要望にお応えすることについて、組織の制約下では難しいケースもあるため、“マンションに特化したインテリアコーディネーター”として独立したという背景があります。最初はアメブロで集客に挑戦しましたが、自己流の運用に時間を取られ、継続が難しかったです。

その後、友人の紹介で業務委託の案件を受け始め、大手デベロッパー系のお仕事を定期的に担当するようになりました。集客の悩みは解消しましたが、案件数が増える一方で自分の処理能力を超え、コロナ禍では打ち合わせ時間の短縮など運用ルールが厳格化し、品質とスピードの両立に限界を感じました。そこで、業務委託と並行して直請けの顧客開拓に舵を切り、最終的に直案件を主軸に据えています。

独立したことで、案件のリズムを自分で設計できるようになりました。一回のお打ち合わせですべての仕様を決定しなければならないケースにも対応できますし、また一方では半年かけてソファを選ぶお客様にも丁寧に伴走できます。取り扱いメーカーの制約から解放された点も大きな変化だと感じています。前職では、会社の都合でご紹介できない家具・インテリアメーカーの製品もあり、このようなケースではお客様の理想を提示できないと感じていましたが、今は自分の責任で良いと判断したメーカーをご提案できるため、納得度の高い提案につながっています。

ただ、全てのことに完璧を追求できる自由がある一方、身体は一つですので現在は広報とCGのベース作成を外部に委託し、業務の負荷を適切に分散しています。おかげで提案の質を保ちながら、健康面のリスクも抑えられるようになりました。

三浦 前職のリフォーム会社では、営業・設計・施工管理まで一貫して担当していました。会社に所属しながらも、実質は個人事業のような裁量と責任を負って働いていた感覚があります。一方で企業として粗利を守る前提があるため、限られた予算の中で要望を取捨選択する場面が多く、施工に費用が偏るとコーディネートや家具に十分な配分が回らない状況が生まれていました。

その後、コロナ禍に入ってからご縁が重なり、独立の流れが自然と整いました。様々な方との出会いから、リフォーム以外の案件にも関わる機会が生まれ、視野を広げながら現在の形に至りました。

竹川 法人化は2018年12月です。退職は同年11月で、ほとんど間を置かずに立ち上げました。突発的に辞めたわけではなく、温めていた構想を形にするタイミングだと判断した、という流れですね。すでにお取引先があり、相手がハウスメーカーさんだったこともあって、個人より法人のほうが信頼や与信の面で適切だと考えました。

水谷 先にもお話した通り、大手デベロッパーの業務委託コーディネーターとして独立前は働いていたわけですが、その時期は約200名のコーディネーターの一員として、依頼が途切れない7年間を走り続けました。タワーマンションが1棟竣工すると、新しい住戸が数百件単位で生まれます。そこで私たちのようなコーディネーターが担当として付き、一軒一軒コーディネートしていくのです。気づけば常に何十件も同時進行し、後半の5年は正月三が日以外はほぼ稼働という生活でした。振り返ると、あれほどの件数を経験できたのは貴重でしたね。

ただ、仕事量が積み上がるほど、優先順位が“効率”寄りに傾きやすくなる自分に気づきました。ご依頼の大小にかかわらず、椅子1脚でも真剣に寄り添うという原点が揺らぎ始めたと感じ、現場を離れる決断をしました。そして2012年に法人化。事務所も構えましたが、固定のクライアントがないまま船出した現実は想像以上に厳しかったです。

――独立後に直面した「会社員時代には見えなかった壁」や、その後の対応についてもお聞かせください。

山本 まずバックオフィスですね。見積・請求・契約・進行管理…事務作業の負荷が大きく、現在は外部パートナーへ移行中です。もう一つは「ビジネス」を体系的に学ぶ必要性です。ブランディングやマーケティング、商品設計、集客導線などを学ぶ環境に身を置かせていただいておりますが、受講生は起業コンサル・美容・マインド・教育分野の方が多く、あまりインテリア系の方に出会ったことがありません。学んだことを自分のビジネスに落とし込む作業が想像以上に大変だなと正直感じております。

とはいえ、その異業種の方々との交流や勉強会での学びを通して、直接お客様とつながるための発信や・提案の在り方は、着実に形になってきました。学ぶ場と外部協業を組み合わせることで、少しずつ地力を高めている最中です。

水谷 創業直後は基礎からつまずきました。請求書の作り方、適正なフィーの設計、掛け率や粗利の考え方――当時の現場は「商品手数料のみ」で回していたため、自分のサービスに対価をいただく感覚が育っていなかったんです。周囲の仲間は委託組が中心で、フリーランスの実務を教わる場も見つからない。試行錯誤の日々が続きましたね。

竹川 創業時、実務面の準備が十分だったかと言えば、正直あたふたでした。長くインテリア畑でやってきた分、経理や労務は社内の別部署に頼る立場。会社という器の一部で働いてきた人間が、急に“全部”を見る側に回る大変さを痛感しましたね。

そこで、税務・労務は最初から外部に委ねる体制にしました。採用についても同様で、かつては自分でハイヤリングしていましたが、独立後は見極めの難しさを感じ、無理に雇用はしないと決めました。自分のキャパシティで品質を維持するために、コーディネーターは原則フリーランス提携という方針です。結果として、法人であっても実質は独りで回す日々が続いています。現在は6期目ですので、案件規模やスピード感を踏まえると、そろそろ常勤の力を加えるべき岐路に差しかかっているという手応えもあります。

(後編に続く)

アスリノ http://asu-reno.jp/
アットインテリア https://at-interior.co.jp/
VanVision https://vanvision.co.jp/
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