【インタビュー2026:経営者の眼】JKホールディングス 代表取締役社長 青木慶一郎 氏

――青木社長は国内のみならず、海外も多く視察されているのでしょうか。

青木 そうですね。当社は全国にグループ会社があり、そして海外でも事業を手掛けています。海外ではアメリカ、ロシア、中国、台湾、シンガポール、インドネシア、マレーシアに拠点があります。アメリカ、ロシア、上海、台湾、シンガポールでは現地法人を構え実際に売買の取引を行っております。インドネシアとマレーシアは駐在事務所を設けており、木材合板の仕入から、そのエリアを巡回することもあります。日本国内のみならず、海外でも事業展開を行いたいと考え、昔からから手掛けています。少しずつ成長している段階です。

――アメリカでは買い付けだけでなく、合板の売買もされているのですか。

青木 もともとは買い付けだけでしたが、国内で輸入住宅が流行った時期に資材をアメリカで購入し日本へ運び、日本で輸入住宅を手掛けている企業に販売していたのですが、その需要も減少し現在ではほぼゼロです。

今のメインは、家具材や建材基材でも用いられているMDFを、ニュージーランドからアメリカへ運び、アメリカの流通問屋や家具メーカーに販売しています。あとは、東南アジアから家具木工用途向けにバーチ合板を持っていき米国で販売をしております。

――国内の市況も苦しい企業が多いようです。その原因のひとつとして新設住宅着工戸数の話がよく出ます。

青木 新設住宅着工戸数は、2025年の3月に建築基準法・省エネ法改正前の駆け込み需要により急増しましたが、その後4、5、6、7月と再び減少に転じたため、通年では大幅な減少傾向となっています。この傾向は2026年も変わらないとみています。良くて2025年並みではないでしょうか。

住宅の着工数が減っている理由としては、住宅価格が上昇しているという要素は間違いないでしょう。以前は大手ハウスメーカーなどは、坪100万円、それより安価に供給するハウスメーカー、ビルダーだと坪60万円程度でしたが、最近では工務店でも坪70万円や100万円を超えて販売するケースがみられます。大手ハウスメーカーだと坪150万円程になっていますから、相当な値上がりだと言えます。これに伴って一般消費者の所得も増えていけばよいのですが、そこまで伸びていない。金利も少し上がってきています。このような逆風が大きいのでしょうね。ただ、マンションに比べると戸建てはまだ買いやすいです。マンションの相場感と戸建ての相場感は異なります。今はマンション価格の上昇がとりわけ強いですから。

新築を建てるにあたり、大手ハウスメーカーに依頼されるユーザーの方々は多くいらっしゃいます。そこはネームブランドに頼る人が一定数いるということでしょう。しかし一番リーズナブルに住宅を提供できるのは工務店さんで、これは今も昔も変わりません。したがって、工務店さんの生きる道はあると思っています。我々は工務店さんのフォローをサービスとして提供し、「ハウスメーカーさんと同じ質のものが建てられますよ」といったことをしっかりとPRできるよう目指しています。

――新設住宅着工戸数がなかなか伸び悩んでいて、その傾向は来年も続くだろうという中で、地域の地場工務店さんの受け止めというのは、どのような反応なのでしょうか。

青木 皆さん「きつい・厳しい」とおっしゃっています。その根本は、人手不足、職人不足にあります。良い職人さんの雇用を維持するためには、継続的に仕事をしていくのが大前提なので、仕事が途切れると関係も途切れてしまう。もちろん、多くの仕事を抱えている工務店さんであればよいのでしょうが。しかしそれはそれで、今度は人が足りなくなる。それぞれの工務店さんで課題は異なるようですが、何かしらの課題は皆さん抱えていらっしゃいますね。

――日本の工務店業界が直面している課題について、人手不足というお話がありました。どのような対策を講じるべきか、お考えがありましたらお教えください。

青木 喫緊の課題としては、職人さんをどのように手配できるかどうかでしょうか。今後はよりその数が少なくなっていくことが見込まれますし、一部では海外からの技能実習生を入れている工務店さんもあります。あとは、これからの住宅は、必要とされる断熱等級が数年ごとに上がり、2030年には今よりもさらにハイスペックな断熱性能を持つ住宅がスタンダードになりますから、それに向けてより知識を深めていかなければいけません。断熱の計算式を覚えるなど、実際の施工や設計面の勉強は必要でしょう。しかしこの点は我々としてもサポートしていけると思っています。

これから世の中にAIが浸透していくことで、ある程度人手不足解消に寄与するでしょう。しかしながらやはり、大工さんはある程度の人数が必要ですし、AIの及ばない領域ですので、逆に脚光を浴びるかもしれないですよね。住宅の単価を上げることができれば、工務店にもっと人が入ってくるかもしれないですね。

――人手不足の問題はかなり深刻なのでしょうね。

青木 そうですね。人手が足りなくて仕事を拡大できないという声も聞こえてきます。なんとか回っているけれども、やはり足りないといった声は多いです。国内全体に言えることですが、高齢者の割合が多くなり、平均年齢はますます上がっています。職人の世界でも、若い人がなかなか入ってこないのが現状です。やはり、しっかりとした大工さんを育てるとなると若手の職人がいるべきでしょうが、まずそもそもの若手が入ってこない。このような意味での人手不足もありますからね。

――新設住宅着工戸数が漸減する中で、売上単価を上げるべく、例えば過去には太陽光発電や蓄電池などの取り組みがあったかと思うのですが、今はそういった単価アップについて、どのような受け止めがなされていますか。

青木 まずお話に出た太陽光についてですが、現在はトレンドとして下火になった感は否めません。ただ、いずれにせよ住宅の単価は上げざるを得ないでしょう。現在はそこに、現実とお施主様の意識の間にギャップがあると感じます。「今時はこれが相場です」とお伝えすると、施主様は、「こんなに高いのか」という受け止める方が多いようです。そのため何社かの工務店さんに見積もりを依頼して、比較検討の末安価な方に流れるというケースも散見されます。

したがって工務店も、単価を上げたい、上げなければならないけれども抑えなければいけない、というジレンマに悩みます。ポイントは単価アップの方法ですよね。いきなり最初から高単価で提案をしてしまうと、前述のように離れられるケースもありますので、いかにしっかりと施主の方をグリップしながら交渉していくかが一層大切になっていくことでしょう。ベースの価格から、付加価値を載せていくとどのように金額がアップするのかといった説明力、提案力、そして営業力が以前よりも問われることになると思います。

――付加価値でいくと、最近は断熱についてもしばしば話題になりますね。

青木 その点に関しては、各社とも必要最低限な提案が現状かと思います。国が出しているロードマップによれば、いずれは、法律の改正にともなって住宅の断熱基準は今後さらに引き上げられていきます。したがってそれに追随していかなければいけないのですが、「今ならこの(断熱)基準で建てられますが、アップグレードも可能です」と提案しても、「基準値が最も安価だから、最低限で建築したい」といった判断をされる施主の方がマジョリティです。

もちろん、高断熱住宅の方が将来を考えると良い、ということは言えるのでしょうが、数値で根拠を示す必要もあり、地場工務店の多くはそこまではなかなかできないですよね。高断熱住宅にすることで、暖房費がいくら節約できて、住宅コストは、何十万か何百万か上がるけれども、何年で元が取れますよ、といった情報をしっかりと提示できないと難しいでしょう。ここで提案の差が出てくるのではないでしょうか。

――JKホールディングスにおいて、売上を維持拡大するために取り組んでいることについてお教えください。

青木 新設住宅着工戸数が減っているため、例えばリフォーム需要を取り込もうとする、あるいは非住宅の市場に向けた営業活動も進めています。既存の戸建てであれば、シェアの中でどのように提案していくか。例えば、工務店さんと施主の方を繋ぐ顧客管理アプリを開発し、提供もしています。あとは建材メーカーさんの省施工建材の提案も行っています。現場の人手不足は深刻で、そのような製品のニーズは一層旺盛です。

――非住宅のお話がありましたが、このような分野に建材を提供していくことはこれまでにされてきたのでしょうか。

青木 実はあまりありませんでした。今までコンクリートや鉄骨で建ててきたような物件は、近年では木造化していく流れが少しずつ増えています。当社のグループ会社では、木材の柱や梁を作っていますから、それを使用していただく物件も増えてきています。内装はまだ一部ですが、今後、地場ゼネコンやサブコンを対象に営業を強化して、拡販を狙いたいと思います。また、他のグループ会社では和室向けの内装材、木材の供給を強みとしており、非住宅に力を入れようとしております。日本の家具との親和性も高い空間づくりを手掛けていきたいと思います。

――付加価値の話に戻りますが、工務店さんがサバイバルするために住宅の単価を上げることについてですが、まだまだ家具と一緒に販売する、提案として取り入れるといった可能性はないのでしょうか。

青木 現時点では、工務店各社においてそういった動きはあまり見られません。また、「家具を誰がどう仕入れるのか」という商流上の課題があります。お施主さん一人ひとり、家具やインテリアの好みの違いもあるため、人手の足りていない工務店が様々な要望に対応しきれないという課題もあります。

しかし当社としてもこの点については何か提案していけたらとは感じており、「Room Palette(ルームパレット)」という住宅関連商品を集めたシミュレーションソフトを当社グループで開発して運用しています。こちらは高画質の画像で実際に販売されている商品でシミュレーションできる点がポイントです。家具メーカーさんに対して3Dの製品データを作成して提供し、そしてルームパレットの中にも情報を入れておくことで、建売りでもリフォームでも、既存住宅でも、アプリでCG化し、家具を見ることができるプラットフォームづくりを拡大していきたいと考えています。

――ルームパレットは、工務店さんが使う想定ですか。

青木 工務店さんは勿論ですが一般ユーザーである施主の方に使用していただきたいと考えています。一般ユーザーの方々は、例えば自分の部屋を撮影してCG化し、「家具やカーテン、壁紙を変えたら、部屋の雰囲気はどう変わるかな」「内装建具や床材と選んだ家具やインテリアの色合いは合うだろうか」といったことを、ソフトで体感していただけるように広げていきたいですね。私たちJKホールディングスとしても、なにかしらの形で家具を扱うことによって、我々のメイン商材がより売れれば良いと考えています。

――最後の質問ですが、JKホールディングスとしての2026年の展望をお聞かせください。

青木 2026年は、着工数は2025年並みとみることができれば、住宅業界が大きく下がる要素は、あまり無いのかなとも思います。世界的に見ても株価は高いですし、日本は高市首相に代わって経済を積極的に強化していくということですし、企業によって優劣はあるかもしれませんが、日本の国自体は良い方向に向かって行くのかなと、私自身期待しています。

その中で、新設住宅着工戸数はそれなりに減ったとはいえまだ需要はありますし、リフォーム需要も増えればいいでしょうからね。したがって、我々の業界でもやりようによっては、まだまだ伸びる余地はあるのではないかと思っています。

リフォーム需要は横ばいですが、買い取り再販のリノベーションは増えています。古いマンションを買ってリノベーションする。それでも新築より安くて済みますから、そのような物件を手掛けているリノベーションの企業は伸びていますよね。しかしこの分野はどちらかというと、建築というよりは不動産の知識を求められます。仕入れとリフォーム費用と、販売想定額を見通せる力が必要です。

昨今取沙汰されている金利の上昇については警戒感をもって注視しておりますが、そう急には大きくあがらないと楽観視しています。住宅ローンの金利に影響しますが、個人的には2~3%程度までならなんとか住宅需要も持ちこたえるのではないか、と考えています。しかしアメリカのような金利水準になった場合、住宅業界全体への深刻な影響は避けられないでしょう。

――お忙しい中、多岐にわたりお話しいただき、ありがとうございました。

(聞き手 長澤貴之)