3Dプリンタでサステナブルな家具製作 「次世代3Dプリンタ展」のリコージャパンブースで、アダルの「リンクラウンジ2.0」等が公開

アダル(福岡市博多区、武野龍社長)と、製材所を母体とする井上企画(福岡県大川市、井上慶子代表)が共同でリデザインし、3Dプリンタを用いて共同で製作・復刻した「リンクラウンジ2.0」が、6月21日(水)から23日(金)の期間、東京ビッグサイトで開催された「次世代3Dプリンタ展」で発表された。

アダルは3Dプリンタ開発元のエスラボ(京都市伏見区、柚山精一代表)に資本出資しており、3Dプリンタ販売の業務提携を手掛けているリコージャパン(東京都港区、木村和広社長)のブースで展示した。

復刻モデルは、従来の大型成型合板シェル構造に代わり、井上企画の木粉と樹脂を混ぜた粒状素材(ペレット)を使用し、リコージャパンのペレット溶解積層方式3Dプリンタでシェルを射出成形した。新しい生産方法では、従来の巨大な金型投資や大量の電力を伴う高周波プレスなどの大規模な設備、量産を前提とはせず、木端材からつくられた木粉と3Dデータのみで1台から製作が可能。同モデルの製作においては、背と座を支えるシェルを3Dプリンタで製造、クッション部分などはアダルの自社工場で製作し、結合した。

アダルでは近年、工場で排出された端材を有効活用すべく、端材を堆肥にして有機農業へと活用する取り組みを進めているが、端材を家具に再利用するという取り組みは初となる。共同製作した井上企画は、材料の販売や加工、商品企画まで多岐にわたり事業を行っているが、その際に処分する家具材広葉樹端材が月に15トンほど出る。その端材を有効活用するための樹種別の木粉ペレットを開発した。3Dプリンタで作られたみかんの皮での製作物を見たことがきっかけで、木材での活用研究を始めたという。

リコージャパンではブースにおいて、3Dプリンタでのプラスチック資源循環を提案。日常的に使用されているプラスチックの回収処理には多くのCO2が排出されるため、その解決に向けて廃プラスチックを新たな価値となる製品として再生させていくことを提案した。

今回の展示では、井上企画が開発した前述の木粉ペレットとプラスチック材を混合し、プラスチック材を減らした製品を開発するとともに、CO2の削減にも貢献、そして廃プラスチックを熱処理するだけでなく、新たな価値をもつ製品へとアップサイクルするという提案のため、3Dプリンタで製作した家具が展示された。

ブースではアダルの復刻モデル「リンクラウンジ2.0」の実物や、製作ドキュメント動画が公開されたほか、井上企画から出された端材ですべてを組み合わせたテーブルなども展示された。城東テクノ(大阪府枚方市)が開発した3Dプリンタ用のPPペレットや、リサイクルテック・ジャパンが開発したものなども展示。

リコージャパンでは、再来年の2025年に開催予定の大阪万博に向けて、大型の3Dプリンタの販売を推進しているという。

大阪万博では3Dプリンタを使用した培養肉技術の展開や、3Dプリンタハウスを出展するための事業提案などが進んでおり、その内装にも3Dプリンタを用いたインテリア用品が充実できるよう、リコージャパンでは家具を製造できるサイズの大型の3Dプリンタの販促に力を入れている。

リコージャパンのエンタープライズ事業本部インダストリアル事業部、三浦邦博氏は「サステナブルな家具づくりへの提案として、より多くのメーカーなどへ訴求していきたい」と語った。