テキスタイルデザイナーの鈴木マサル氏の個展「テキスタイルの表と裏 -Looking through the overlays-」が、2023年7月1日(土)から22日(土)にかけて、Karimoku Commons Tokyo(東京都港区)で開催されている。
同展はテキスタイルデザイナーの鈴木マサル氏によるファブリックの個展。会場デザインは建築家の芦沢啓治氏。グラフィックデザインは佐々木拓氏および金井あき氏、展示コーディネーションを藤本美紗子氏が手掛けた。
開催前日には、鈴木氏によるプレスカンファレンスが行われた。以下、鈴木氏による展示説明。
▽鈴木マサル氏の話
「もともとのキャリアのスタートがインテリアファブリックだったこともあり、もう少しデザインの文脈に沿って、インテリア・空間に対してのテキスタイルというものを提案していきたいという思いが強くなり、今回の展示を企画しました。会場を探している中で、それほど広すぎず、空間が綺麗なところという要素から、Karimoku Commons Tokyoで開催させていただくことになりました。」
「展示会は、具体的には”テキスタイルの表と裏”というタイトルをつけています、両面からプリントしたテキスタイルとなっています。空間にテキスタイルが入る場合、大体のケースでは背中に壁を背負うか、もしくは窓を背負うかという形で存在しています。これが、『両方から見ることができる』テキスタイルであれば、空間のどこにでも自由に入っていくことができ、空間をゆるやかに分断していく役割を果たしていけるのではないか、と考えて、このような生地を作っています。単純だが、他にはなかなか無い生地ではないかと思っています。」
「イメージとしては、この空間に展示するためにデザインしました。モチーフについては特に何も考えておらず、空間にどう作用するかということを考えると、やはり「空間を動かしていく」ような大きな構図を手がけようと考え、このようなデザインになりました。何もない空間にどう作用するかということを意識したデザインです。」
「この考え方は壁面の壁画や、家具とのコラボにも反映されており、家具へのペイントも、『家具自体の形を動かしていく』という意識でデザインしています。会場デザインをお願いした芦沢啓治さんには、建築的に考えていただきたいということをお願いしました。私としてはシャープに、今までとは違った展示にしたいと思って依頼しました。」
「こちら側の空間ですが、最初は引き戸で横にスライドするというプランだったのですが、10日ほど前に変更しました。」
「開き戸によって表裏が見えますし、湿気も起こらないので需要があるのではないかと思っています。」
「壁に描いてある絵についても、今回展示のコーディネートを藤本美紗子さんに手がけていただきました。もともとは違うことをやろうとして企画した展示なので、なにか中心になって考えていただける存在が欲しいということでお願いしたのですが、その藤本さんによるアイデアでこの壁のアートも手掛けることになりました。この壁のアートも生地と同じで、何か絵を描くというよりかは空間を動かしていくような色面を意識してペイントしています。」
「私は派手な色を使うことが多いのですが、今回はこのカリモクコモンズで展示するインテリアの中でのファブリックの立ち位置などを考えて、自然とこのようなニュートラルに近い色としました。そのことによって、より効果的に見えているのではないかと思っています。」
ここで、会場デザインを手がけた芦沢啓治氏がコメント。「テキスタイルそのものが、空間的にどのような可能性があるのか」を来場者が感じることのできるような会場デザインとし、建具については建築空間にもテキスタイルを採り入れて表と裏の面を見せること、木のフレームに対するテキスタイルの柔らかい印象など見せることができるようにしたと話した。
続いて、カリモク家具の加藤洋副社長が挨拶。開催場所のカリモクコモンズを設立した経緯および、今回の展覧会開催のきっかけを説明した。加藤副社長は「鈴木氏が今回の展示会・展覧会で追求している『空間の中におけるテキスタイルの可能性』、空間の中でテキスタイルがどのような役割を果たしてきたのかを今一度見つめなおすということは、私どもとしてもとても相性がよく、素晴らしい企画をいただけたと嬉しく思っている」と話した。
なお、会期中の7月7日18時半から、鈴木マサル氏、芦沢啓治氏、藤本美紗子氏によるトークイベントを開催する。空間デザインやビジネスの視点から、テキスタイルデザインの役割、可能性、未来について語られる予定だ。進行はデザインジャーナリストの川上典李子氏。当日現地参加枠は締切済だが、オンラインでの同時配信を行う。展覧会の詳細およびオンラインでのトークイベント参加の申し込みは、下記URLより。(文・写真 佐藤敬広)