
輸出先1位は米国、関税影響はこれから
イタリアのコモ、チェルノッビオで開催される伝統的なテキスタイル展「プロポステ」が今年も盛大に開催された。
32回目の開催を迎えた同展には今年、全部で78社が出展、昨年とほぼ同数となった。そのうちイタリア国内企業は約4割にあたる30社。国外からは15社出展したベルギーを筆頭に、イギリス(8社)、トルコ(6社)、スペイン(6社)、インド(4社)の順で出展。今年のテーマは、「インテリアテキスタイルの未来」とし、同展を通じてこの先の張地、カーテン、壁紙のあるべき姿が掴めるトレードショーとしたいという願いが込められた。また、会場の近隣に位置するシェラトンレイクコモホテルでは、今年10回目となるインターナショナル・オブザーバトリーも開催、同会場では8社が様々なテキスタイルを展示した。例年通り、プロポステの入場証で入館が可能とした。
今年の出展企業は全体の約2割が家具用張地に特化した一方、1割がカーテンに特化した。全体の2割が張地・カーテンをバランスよく展開し、3割が家具用張地に重きをおいて展示した企業となり、全体的に家具用張地が多い構成となった。(詳細は円グラフを参照)

また、張地・カーテン共にドビー織とジャカード織の製品が過半数を占め、次いでプリントやベルベットなどで構成された。多くの出展企業は売上の大部分を輸出に頼っており、その中でも最大の輸出先は米国だ。出展社達はドナルド・トランプ大統領による関税方針に懸念を示しつつも、現時点ではまだ取引に差し迫った変化は訪れていないことと、刻一刻と変化する報道を受け、今後を見守りながら方向性を決めていきたい、という「待ちのスタンス」を決め込む企業が多く見られた。

アウトドア用張地・FR訴求顕著、コントラクト指向進む
昨年も多くみられたアウトドア用張地は今年も存在感を示した。家具用張地を扱う出展社のうち、6割以上の企業がアウトドア用張地を前面に出して展示を行った。これは欧州を中心に、多くの家具メーカーが売上拡大を狙ってアウトドア市場に参入しはじめたことが原因とされる。また、今年は張地、カーテンともにFR(難燃性)の製品訴求が活発に行われた。いずれも非住宅市場での展開強化が背景に挙げられる。事実、これまでのプロポステの展示は圧倒的に住宅向けが多かったが、ここにきて今年は、全体の3割弱が非住宅向けとなった。主な対象セクターはホテル、オフィス、レストランなどである。来場者にも変化の兆しがある。「テキスタイルエディターやエージェントが大多数であることに変わりはありませんが、一定数コントラクト関係者も増えてきました」とプロポステ運営担当者は語った。
テキスタイルの色合いは多岐にわたり、柔らかさを感じさせるホワイトや、自然を想起させるグリーン、そして昨年に引き続きテラコッタも多くみられ、ビビッドよりはソフトなテイストが多くみられた。

また、多くの企業が自社テイストを表す独自のテーマを掲げ、製品のストーリー性を訴求する姿が印象的な年でもあった。例えば、アウトドアに強いPARAは3人の著名な女性にフォーカスし、「自由」「創造性」「境界を越える」をテーマとしてデザインを展開。IMATEXは、「健康」をテーマに身体や血液の暖かさを表現したデザインの新作を展示した。TORRI LANA1885は「柔らかさ」をテーマとし、シュニール糸を使うことで光が表面をやわらかく反射、もこもこの触り心地も実現するなど、やさしさが前面に出る張地をテーマとして打ち出した。
なお、2026年の同展は、5月5日から7日にかけての3日間とし、会場は引き続きヴィラ・エルバで開催を予定している。
(長澤貴之)