【特集:広がるホームステージャー(2)】クラシャス 主宰 木村誠子氏 “空室演出”にとどまらない、暮らしに効くホームステージングの使い方

個人事業として「クラシャス」(東京都墨田区)を手がける木村誠子氏は、約35年のインテリアコーディネートの経験を基盤に、ホームステージングの資格取得と現場経験を重ねて活動領域を広げてきた。

木村氏は、モデルルームや住宅展示場の計画に長年従事するなかで中古物件案件が増えたことを契機に同手法と出会い、ホームステージャー2級・1級の資格取得後は講師としても登壇。現在は「居住中ホームステージング」や睡眠環境づくりまで射程に入れ、顧客の暮らしそのものに寄り添う提案へと進化させている。

木村氏が重視するのは、空室を“映えさせる”演出にとどまらない生活の質の底上げだ。引渡し時に整えられた空間も、時間とともに生活感が積み重なる。そこで同氏は整理収納の知識を取り込み、居住中の家に赴いて動線や持ち物の置き場まで整え、日常の再編集を図る。家具や寝具・ベッドリネンだけでなく照明・遮光・湿温度管理まで踏み込む「睡眠環境コーディネート」も立ち上げ、快眠を軸にした健康的な住まいづくりを提案している。

収益構造は、長期の請負案件が太い柱。これが安定基盤となり、講師業や新サービスに投資しているという。「居住中」案件では実際の暮らしを数百件単位で観察してきた経験が武器だ。中古売買の現場では不動産知識も要求されるが、協会の講座で媒介形態や流通の基礎を押さえ、現場ではデベロッパーの“望む成果”を読み解く。専任媒介獲得の施策としてホームステージングを組み込む動きにも現場で接しており、同氏は「条件の厳しい住戸ほど、魅力の見立てと見せ方が問われる」と明かす。

演出の実務は、家具・照明を核にカーテン、ラグ、ベッドカバーやクッション類を効かせ、フェイクグリーンや花器、食器、洗面小物、フェイクブックなど“エレメンツ”で生活の気配を描く。調達は案件のテーマと色設計を起点に、量販からセレクトまで幅広い。必要に応じて家具・カーテンの新作発表会や海外ブランドのショールーム、ライフスタイル系見本市にも足を運び、トレンドと価格感の両面から最適解を引き当てる。

市場観については「空室演出の需要は市況と予算次第」という冷静な見立てだ。一方で、ホームステージング実施が周辺の販売スピードを押し上げる事例が積み上がれば“ホームステージングを実施しないと不利”という思考が働き、裾野は拡大すると読む。消費者の意識は二極化が進むものの、SNSやメディア露出の増加で最低限の審美眼は底上げされ、「あまりに雑な空間は選ばれにくくなっている」と指摘する。

「クラシャス」は“暮らしにコンシャス(意識的)”を掲げる。木村氏のホームステージングは、売るための演出に加え、住むための設計にまで踏み込む実装型のコンサルティングだ。中古流通の拡大、健康志向の高まり、そして快眠価値の再評価がされつつあるなか、“空間を整えることが生活を整えること”であると同氏は意気込む。

(長澤貴之)