【オルガテック東京2023ピックアップレポ⑥ 森傳】「環境の森傳」を前面にサステナブル素材を訴求

森傳(東京都港区、森田康雄社長)は、オルガテック東京2023の「インターツムショーケース」エリアに出展。「Well-being」をテーマに掲げた展示提案を行った。生地生産、裁断・縫製、端材回収、繊維製品のサイクルでサーキュラーエコノミーを実現するため、様々な切り口から同社は商品開発・提案を重ねている。

同社が現在最も力を入れているのが、ケミカルリサイクルプロジェクトの「RENU®」だ。同プロジェクトは伊藤忠商事が立ち上げたサーキュラーエコノミーの実現を目指すプロジェクトで、森傳は家具・インテリア業界でのパートナー企業として参画している。一般的に知られる、使用済みペットボトルを原料としたリサイクルポリエステルは、ペットボトルを溶かして再度糸にするというものだが、「RENU®」は「ケミカルリサイクル」がコンセプト。これは不要となった生地や裁断くずなどを原料とするため、石油由来のポリエステルと比較して、より環境への配慮姿勢が訴求できる。また、ペットボトルから作ったリサイクルポリエステルは価格高騰や供給量の課題があるが、繊維製品は今後の時代も変わらず使い続けられるものであるという要素も、大きなアピールポイントであると同社。

ブースでは「繊維から繊維へ」をテーマとした提案を行い、ブース角には「RENU®」の弾性メッシュを使用したチェアや、メッシュの参考生地数種が掲示され、来場者はじめ出展したメーカー各社からも注目を集めた。

また、りんご残渣から生まれたヴィーガンPVCレザー「RINGO―TEX BIO PVC」や、タマネギの皮成分を配合した染色方法「Onibegie®(オニベジ)」による製品、ペットボトルリサイクル極細繊維使用のスエード調ファブリック「NEXUEDE®」といった、環境へ配慮したアイテムを数多く展示した。「RINGO―TEX BIO PVC」は、りんご産地として有名な青森県のフードロスを防ぐため、りんごを加工する際に出る残渣を再利用したPVCレザー。いろいろな仕様を工夫しながら、一部バイオ由来素材に置き換えることで、石油由来成分の削減を目指している。「オニベジ」は染料の中に、廃棄される北海道産のタマネギ、香川県産のオリーブ、山梨県産のワインといった日本全国の植物由来の原料を加えており、天然成分配合によって紫外線の反射が低減でき、目に優しいという点もポイントとして訴求した。

「生地本来の品質のよさはもちろん、それに加えて環境や機能性といった『ストーリーのあるものづくり』を手掛けていきたい」と、同社の新田保信取締役は話す。昨年に引き続きオルガテック東京に出展した同社だが、来場者からも高評価を得られているという。同社は海外にも製品を展開していきたいとし、商談も活発に行っているようだ。
糸一本一本からこだわり、想いをもった上で生地を作り上げていくという、企業としてのフィロソフィーをしっかりと守りながら、あらゆる面に配慮し、「できることから始め、そして続けていく」という同社。113年の歴史を誇る同社は、その引き出しの豊富さを来場者に訴求、環境配慮へのトップランナーとしての姿勢を前面に打ち出した。