西川産業社長 西川八一行氏 2016年インタビュー

品目を超えたトータルライフスタイル提案

長島 以前は日本でも家具の分割払いは多かったのですが、いつの間にか一括購入が主流になってしまいました。

今、世界の家具の展示会を見ていて感じますが、特に欧米先進国の住宅では寝室がメインになっています。寝室にリビング、あるいはダイニングやホームシアターの機能が含まれ、ただ寝るだけでなく、様々な生活スタイルを体現できます。このように、家具という店頭で売られているハードに加えて、雰囲気というソフトが生まれ、それによってニーズ対応や差別化が可能になります。ですので、貴社には住生活の中心は快適な睡眠であると同時に、その周りに多様な生活スタイルというソフトが生まれるという認識のもとで、我々の業界とタイアップいただければと存じます。

もう一つに店内レイアウトですね。実際に店舗に来たお客が生活シーンをイメージできるような店内レイアウトの必要性が高まっています。だからこそ、寝室もこれからシーンでの提案というものが求められると思います。

西川 おっしゃる通りです。我々はこの数年特に各製品の機能を高めてきましたが、これからライフスタイル提案の強化が求められていると認識しています。欧米には様々なスタイルの寝室がありますが、それをお客様が選べるように提案しなければならないということです。そのためには我々もトータルコーディネートのノウハウを発揮する必要がありますし、これにテレビ・照明などの寝具以外のものも含めてコーディネイトする必要があります。

こうしてお客様それぞれの好みに合った空間が出来上がると、真のホームファッションというものをしっかりと前面に出していくことができます。また、こうしたホームファッションや機能・品質は連動して向上するものであり、現在、医療や快眠という観点で機能の強化を行っていますが、もう片方のファッション性の向上というものも、販売店と一緒になって向上させなければいけないと感じております。

これは下期以降の方針でありますが、これからはお客様のライフスタイルをパターン化していって、そのパターンに乗っ取ってデザインしていくという、ディレクションをより強化して、こんな部屋に住みたいと思ってもらえるものを提供していく予定です。それに合わせて、各家具店にもお部屋の提案を我々に任せてもらえないかとアプローチしていく考えです。

また、家具店を見ていると、家具売り場と寝具売り場はそれぞれ独立して設けられています。官公庁でも、我々の管轄は経済産業省の繊維課で、やはり家具とは異なっていましたが、この度統合されて生活製品課という一つの部署になりました。私としては、国が方針を変えて家具や寝具という生活の質全体を改善していく産業を支援していくために、業態を縦割りから変えたのだと考えております。我々もそうした分野の横断的な提案をして、新しい価値を内外に示していけたらと考えております。そのためには、家具と寝具とで品目別にバイヤー・予算・売場が分かれている状況も変えなければならないでしょう。特に官公庁でさえも縦割りからトータルライフスタイル型に変化している状況をみるに、現状のような品目別の営業や運営では、今の時代には合わないと思います。

西川八一行社長

眠りの生活文化創出へ注力

長島 まさに冒頭言われた「生産者目線・販売目線」の縦割り話ですね。海外では、生活シーンをイメージできるように、テーマやコンセプトに沿って、寝具や家具を配置して販売する動きが活発です。近年では、家具というものの括りが広くなっているようにも感じますが、依然として市場や店頭規模では家具小売店のほうが大きく、生活シーンに沿った商品配置を採用した小売店も多く見られます。

西川 私どもとしては、ただ単に低価格を追求するのではなく、お客様の生活をより良くできる商品を提供するというご方針の小売店様と取引ができればという考えです。お客様は何かを購入する際には百貨店、寝具・家具専門店、量販店にも足を運びます。だからこそ、お客様が足を運ぶところには質の高い当社の製品を置いてもらいたいというのが私の願いです。だからこそ怖いのは、お客様の中に家具店に行くという選択肢そのものがなくなることです。我々も最近は寝具という道具だけを売る会社から脱却しようとしているわけです。寝生活にまつわるソフトをしっかりと提案できれば、クールジャパンの一環として輸出することも不可能ではないと思います。

長島 本日は貴重な時間を有り難うございました。寝装寝具業界と家具インテリア業界はインテリアライフの一体業界として国民のさらには高齢化社会へ健康・快適生活を供給していく責務があると思います。450年の重みをもって伺いました。


この記事は紙面の一部を抜粋しています

西川産業ウェブサイト

ホームリビング/寝装ジャーナル 購読に関するお問い合わせはこちらから