西川社長 西川八一行 氏 2017年新春特別インタビュー

西川社長

西川八一行氏

聞く人
若林拓

ライフスタイルを基軸にデザイン強化「眠りの相談所」1000店舗を目指す

――2016年を振り返ると、どのような年でしたか。

西川 2016年の社会情勢を振り返ってみますと、日本では熊本地震、東京都知事選挙などが大きなニュースになりました。世界的にはイギリスのEU離脱、リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックなどが関心を集めました。

中でも記憶に新しい出来事が、アメリカ大統領選挙において、共和党のドナルド・トランプ氏が勝利したことでしょう。トランプ氏の勝利は日本にも多大な影響を及ぼしています。事前の見通しでは、大統領選後の為替相場は、ドル安・円高に向かうと見られていましたが、現実には円安という思いがけない動きになりました。

――2017年は、どのような年になるでしょうか。

西川 今後の予測が、立てにくいというのが正直なところです。トランプ氏は自国主義に近い表現をしているので、日本円は弱くなるという見方があります。一方で、拡大成長路線により円安は治まるだろうとの意見もあります。いずれにせよ、為替の動きには当面目の離せない状況が続くでしょう。

アメリカの情勢は世界に影響を及ぼしますが、むしろ現在の中国情勢の方が気にかかります。現在の中国はバブルに近い状況であり、それが弾けた場合、日米にどんな影響を及ぼすか懸念されます。

想定通りに動かない混沌とした経済状況の中、我々を取り巻く市場や消費動向も非常に早いスピードで変化しています。例えば一昨年までの消費動向は本質回帰でしたが、現在では価格重視に戻ってきており、特にコモディティ化している一般的な商品に関しては、その傾向が強いようです。その反面、他とは異なり、自分の明日を良い方向に変えてくれるようなコンサルティング型のサービスや商品は依然として好調です。

このような中、当社としては、変化の中にあっても、健康や美容など、状況に左右されないものに注力していきたいと思っています。

――2017年の商品展開については、どのようにお考えですか。

西川 当社では、3つのFをテーマに掲げた商品展開を行っています。ファッション(デザイン性)、ファンクション(機能)、ファンダメンタル(日常性)です。今年は、デザイン面でのレベルを高めていこうと考えています。ここで重視しているのが、単にキレイなものではなく、ライフスタイルを基軸にしたデザイン開発や商品編集です。

東京西川では、世界で活躍するファッションデザイナー滝沢直己氏 をアーティスティックディレクターに迎え、ライフスタイルを切り口に、商品のみならずMDに至るまで、高いデザインクオリティで展開していきます。

―― 機能面については、いかがでしょうか。

西川 機能面では、日本睡眠科学研究所を設立するなど、業界でもいち早く科学的な研究に取り組んできました。現在では、筑波大学の「国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)」との共同研究や、同志社大学「アンチエイジングリサーチセンター」との共同研究などを進めており、権威のある機関の裏付けをもとに、信頼性の高い情報発信・商品開発に力を注いでいます。

低価格帯の日常品に関しても、デザイン性の高さで差別化を図っていきたいと思います。加えて、紡績メーカーなどと共同で、スポーツや医療の素材を寝具に転用するなど素材開発も進め、統合的にライフスタイル提案を強化していきます。

――販売については。

西川 売り方に関しても、さまざまな方法を模索しています。ひとつはビッグデータの活用です。例えば百貨店では、膨大な顧客データを持っていると思いますが、年齢や性別の切り口だけでなく、ここでもライフスタイルや関心軸を切り口にすることで、より効果的なアプローチが可能になるでしょう。

例えば、ゴルフ用品などアクティブ志向の購入履歴が多い方に『エアー』などをご提案する。自然食品やヨガ関連など自然派志向の購入履歴が多い方に『& Free(アンドフリー)』をご提案する。こうしたことで、お客様のライフスタイルや関心に沿ったご提案が可能になるでしょう。

寝具の支払い方法の改革として、スマートフォンなどでも主流になっている月額制の普及を進めていますが、寝具専門店を中心に広がってきています。引き続き推進していきたいと思います。

――続いて、海外展開についてお聞かせ下さい。

西川 海外にも積極的に目を向けていきたいと計画しています。昨年10月、マレーシア・クアラルンプールにオープンした「イセタン・ザ・ジャパンストア・クアラルンプール」において、『エアー』を中心に出展しました。オープンな場所でオーダーまくらの測定などを行いましたが、抵抗なく受け入れていただき、非常に良い感触を覚えました。

商品だけでなく、コンサルティングやサービスなども含め、高い評価をいただいた事は大きな自信となりました。まずはアジアを突破口に、今後はアメリカやヨーロッパなども見据えた展開をしていきたいと考えています。

――今後の課題については。

西川 今後も、より質の高い睡眠の提案ができるよう、寝具専門店様を「眠りの相談所」と位置づけ、10万人に1店とし1000店舗を目標に掲げ注力していきます。今年は西川創業451年目。新たなスタートと考え、睡眠の価値をより多くの方々に気づいていただき、新たな歴史を築いていきたいと思います。


この記事は紙面の一部を抜粋しています

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