吉桂社長 吉田浩一 氏 2017年新春特別インタビュー

吉田浩一 氏
吉桂社長

吉田浩一

聞く人
前屋敷稔

コーポレートブランド「ランドシート」

――2016年の家具インテリア市場をどのように見ていますか。

吉田 業界は専門店ルートが苦戦し、家具市場そのものが縮小していると思います。ただ、購買チャネルが変わる、ないしは購入方法が変わってきた部分もあるかもしれません。購買チャネルは従来の家具専門店ではなく、無印良品さんなどで、またニトリさんが業容を拡大している影響も大きいと感じます。

当社としては従来の専門店ルートだけではなく、インターネット企業、アパレル企業などの開拓に力を注いできました。

――御社の2016年の事業では、コーポレートブランドの「LANDSEAT(ランドシート)」への刷新が大きいですね。

吉田 これからは、会社をそっくり作り変える、パラダイムシフトしないと生き残れない時代になっています。

そこで当社は、自社製品の開発と、問屋としての仕入製品の、この2つをハイブリッドさせた経営を標榜したのです。ただ、これまでは、それらの配分をどうするか、はっきりしていなかったのです。どうしたいのか、社内にも社外にも打ち出せていなかったので、このほどはっきりと方針を決めて実行していくことを表明したのです。

また、当社は2017年1月、創業80周年を迎え、正月に80周年祭を催すのですが、社歴が長い分、特に家具業界では当社は単なる問屋のみを事業としていると思われているようです。

しかし、実際は問屋業務においても、仕入製品を厳選し、安定供給するという業務を徹底的に行う、つまりSCM(サプライチェーンマネジメント)をしっかり実行しています。

吉田浩一 氏

さらに、今では自社製品を生産しています。以前と違って、単にメーカーと小売企業の間に入るだけでなく、付加価値を創造する企業に変わってきました。

これらはここ10年間ぐらいで実行してきました。

そこで、会社名を変えるぐらいの思いで、コーポレートブランドを刷新したのです。新規顧客の開拓に行って、吉桂は問屋でしょうといわれ、取引できない小売企業があります。確かに当社は問屋の機能を持っていますが、メーカーの機能も持っているのです。

当社の問屋機能を利用している、大手小売企業は多数存在します。ですから、問屋機能は大いに発揮できる。

自社製品と仕入製品で小売企業の方へ、お役に立てることは多い。

吉桂は単なる問屋である、というイメージが強すぎて、それを変えたいということでもあります。

――ランドシートの言葉の意味は。

吉田 ランドは土地ですが、売場、住空間も指します。シートは家具を指しますが、皆さんのランドに合わせた家具をお届けする、という意味です。

ランドシートの目的は、第一に、対外イメージを刷新することです。業界内でのイメージを変えます。

第二に最終消費者向けにイメージ付けをする。最近、最終消費者からの問い合わせが増えています。自社製品が一定程度売れているので、売れ行きの伸びに応じて問い合わせが増えているのです。

第三は、人的資源管理に関わります。今後、どうしていくのか社内で釈然としていなかったと前に述べましたが、ランドシートというコーポレートブランドを立ち上げるとともに、自社製品と仕入製品をしっかり提案販売していくことを社内に明確にしました。

これらのことによって、社員、幹部に社内的に、これから歩むべき道を打ち出したわけです。

――3番目の人的資源管理について、もう少し詳しく。

吉田 家具業界ではこれからは、業態に関係なく、付加価値を生みだしうる企業しか生き残れなくなると思います。廉価販売というだけでは、消費者に訴えるものがなく、難しくなります。

問屋、メーカー、小売企業はそれぞれ違った業態ですが、人を育てることは、ますます重要になってきます。

メーカーと問屋のハイブリッド経営

――特徴的な自社製品でいくつか挙げていただくと。

吉田 まず自社製品については、開発の基本として、市場に出てない、比類の少ないデザイン、素材を使用した製品を開発し、自社の持ち味として市場に投入しています。

たとえば、ウイスキーの樽材を家具として再生させた製品があります。実際に数十年、ウイスキーの樽として使われ、廃棄されるものを、家具の素材として使いました。製品名は「ウイスキーオークシリーズ」といいます。発売以来、売れ行きが好調です。

また、日本の家具にはほとんど見られない、柿渋塗装を施した「MINO(ミノ)」シリーズは自社製品の柱になっています。

そういう塗装やソファの布張り地もファブリックスメーカーと共同で開発に取り組んでいます。

私たちはもともと製造業者ではないのですが、だからこそ、製品開発では新しく、革新的な方向を目指しているのです。

――開発、生産体制はどうなっていますか。

吉田 企画グループは、「デザインチーム」、品質をチェックする「QCチーム」、マーチャンダイジングの「MDチーム」、仕入部門の「BCチーム」から構成されており、かなりの人員を配属しています。

自社で図面を引き、品質管理まで行っているので、人材育成が課題です。

――最後に、2017年の事業方針を。

吉田 先ほど述べたように、自社製品と仕入製品のハイブリッド経営をさらに深化させます。

さらに、家具専門店にもそれ以外にも、製品とVMD(ヴィジアル・マーチャンダイジング)をしっかりと提案していきます。

ランドシート80年祭では、これまで業界になかった製品を多く発表するので、期待していただきたいと思います。

2017年の市場全体は、2016年より厳しくなるでしょう。肌で感じます。個人消費が伸びづらい流れがあるからです。したがって、高い経営効率で利益重視の経営を求めていきます。


この記事は紙面の一部を抜粋しています

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