村内ファニチャーアクセス社長 村内健一郎 氏 2017年新春特別インタビュー

村内健一郎 氏
村内ファニチャーアクセス社長

村内健一郎

聞く人
若林拓

店舗販売の利点は「人の温もり」

――2016年の事業総括についてですが、最も注力したことをお聞かせ下さい。

村内 2016年に特に力を入れ、取り組んだことは人材育成です。各店舗のマネジャーの元、PDCAサイクルの強化を図りました。PDCAサイクルとは、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の4段階を繰り返すことによって業務を継続的に改善することですが、今年も引き続き注力していきたいと考えています。

当社は家具・インテリアの専門店「村内ファニチャーアクセス」を八王子本店(東京都八王子市)、相模原店(神奈川県相模原市)、横浜港北店(横浜市都筑区)の3店舗、ベルギー生まれのライフデザインショップ「OKAY」を八王子店(東京都八王子市)、みなとみらい店(横浜市中区)、アルカキット錦糸町店(東京都墨田区)、ららぽーと立川立飛店(東京都立川市)の4店舗を展開しています。当社では、村内ファニチャーアクセスのスタッフを「アドバイザー」、OKAYのスタッフを「スタイリスト」と呼んでいます。

当たり前のことですが、彼らなくして当社が扱う商品を売ることはできません。店舗での商売は、お客様と対面するスタッフ一人ひとりの魅力や個性が売上を左右すると、私は考えています。そのため、当社の人材育成はマニュアルでギチギチに固めずに、スタッフの個性や魅力を殺さないような方針をとっています。言い方を変えれば、「ゆるい」ということになるのかもしれません。昨年は人材育成に注力したと言いましたが、この方針に変わりはありません。

「ゆるい」ということは当社の弱みでもありますが、良い点でもあると思っています。仕事で心を病む人が多い中、当社の方針は間違ってはいないと考えています。もちろん、当社の職場環境が良いか悪いかを判断するのは私ではありませんが、意識的にゆるさを生んでいるのは事実です。

村内健一郎 氏

――昨今は、店舗で商品を実際に見てからネットで買う、といった人々がますます増えていると聞きます。

村内 店舗に足を運んでいただけるだけでも、ありがたいことではありますが、「村内で買いたい」と思っていただき、実際に購入いただけなければ我々の商売は成り立ちません。ネット店舗になくて、リアル店舗にある、最も大きな強みは「人の温もり」だと考えています。そして、温もりはスタッフの心の余裕が生むものだと思います。スタッフが心身ともに健康でなければ、本物の笑顔は生まれないでしょう。また、マニュアルの笑顔での接客では「村内で買いたい」と思っていただくことは難しいと思っています。

殺伐とした時代です。店舗販売が厳しいことに変わりはありませんが、店舗を設け、お客様と対面することで得る人の温もりというのは今後、一層重要となってくると思っています。

もう一つ、「村内で買いたい」と思っていただくために、できることはより専門性を高めていくことだと考えています。八王子本店はOKAY八王子店が併設されており、敷地面積3万3,000m²、売場面積2万1,000m²と大型店ですが、売り場の一つひとつがこだわりを持った小さな家具屋であったり、セレクトショップのようにありたいと常々考えています。

良いセレクトショップというのは、限られたスペースでありながら限られた商品を組み合わせて展示することで、魅力をさらに引き出し、お客様に商品の可能性を伝えています。また、「ここのセレクトショップに置いてある商品なら間違いない」といったセレクトショップのファンになるお客様もいます。

一つの大きなお店ではなく、一つひとつの売り場がこだわりを持った小さな家具屋やセレクトショップであり、それらが集まって「村内」ができている――当社は、そのような店舗づくりを目指しています。私たちは、ただモノを売っているわけではありません。商品を売るとともに、その商品の魅力と可能性をお客様と対面し、直接お伝えしなければいけません。店舗販売の魅力と可能性はまだまだあるはずです。

――輸入家具の比率は何割ほどですか。

2016年は、八王子本店において輸入家具の販売比率が前年より若干下がり、2割を切りました。八王子本店での輸入家具の販売比率は例年2割ほどです。八王子本店以外の店舗ですと、若干割合が上がります。今後も同程度の割合で輸入家具を販売していく考えです。

――貴社の八王子本店は、長年にわたって築いてきた地域密着型の店舗としての強みもありますね。

村内 地域密着という点において、まだまだ満足はしていません。まだまだ八王子市内の方々に村内を知っていただいていないと考えています。業界は違いますが、地域密着という点において、全日食チェーンの足元にも及びません。全日食チェーンは、全国約1,700の商店が加盟する日本最大のボランタリーチェーンです。他業界の小売業から見習うべき所はたくさんあります。

社会は変容しています。人口が減っており、少子高齢化が進む一方です。人生において最も家具を買い揃える機会が多いのは、結婚をするときだと思いますが、結婚率もどんどん下がっています。決して、我々にとっていい時代とは言えません。成長しないマーケットの中で、顧客獲得のためにできることはどんどんやっていかなければいけません。顧客獲得のために当社が実施している例を一つ挙げるなら、店外で開催している催事です。

催事を開くことで、地域の外に目を向けながらも、地域のお客様との関係も一層に深めていきます。今までの村内が「地域密着」であるなら、これからは「超地域密着」へと進むときなのかもしれません。

店舗間のネットワークを強化

――先ほど、催事の話が出ましたが、貴社は毎年、様々な催事をやられています。2016年は、どのような催事を開催しましたか。

村内 2016年の夏から「ダイナミックチャリティーバーゲン」と題し、東京都内や横浜の会場を2日間借りて、5回開催しました。一回の催事で来場いただいたお客様の人数は2,000人ほどです。この催事は今年も定期的に開催していく予定で、昨年と同じく5回ほど開催していきたいと考えています。

催事の開催する意図は、先ほども述べましたように、顧客の開拓と獲得です。特に首都圏には、当社が扱う家具を求めている人々が多くいると考えています。情報が溢れているから村内に行き着かないのではないかとも考えています。実際に催事を開催し、来場していただいた人数からも、私の考えは間違いではなかったと実感しています。

催事に来場いただいた方々に「村内」と「OKAY」を知っていただく、それだけでも一歩前進です。そして、興味を持っていただき、実際に店舗に足を運んでいただければ、必ず満足していただけると自負しています。

――最後に2017年の展望をお聞かせ下さい。

村内 店舗間のネットワークの強化の必要性をひしひしと感じています。八王子本店を例に挙げますと、その敷地内には「村内」、「OKAY」以外にも「村内美術館」や「BMWショールーム」などがあります。

例えば、BMWショールームにいらしたお客様とお話しする中で、家具の話題が出たならば、「村内とOKAYがすぐそこにあるので、ぜひ足を運んでみて下さい」と勧めるなど、ちょっとしたことではありますが、こういった会話の積み重ねが、大きな結果に繋がるのではないでしょうか。一つひとつのお店には十分に魅力はありますが、ネットワークを構築し、連携することで、まだまだ魅力を引き出せるのではないかと思っています。今年は、村内の魅力をさらに高めるために、如何にしてネットワークを構築し、店舗間で連携していくかが課題です。

とはいえ、やはり厳しい時代に小売業が生き残るには、前提として良い商品を売るというのはもちろんですが、「スタッフ一人ひとりの力」が大きいという点に着地すると思います。


この記事は紙面の一部を抜粋しています

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