第56回大川家具新春展が、2024年1月10日から11日にかけて福岡県大川市で開催された。主催は協同組合福岡・大川家具工業会(河口健理事長)。第1会場の大川産業会館、第2会場の大川家具工業団地Uゾーンと第3会場のインテリアポート・エルバーレの3会場を合わせて194社が出展した。
福岡・大川家具工業会の河口健理事長は開会セレモニーで「2024年は辰年。新春展の開催は56回目になります。こうして、普通の状態で開催できることの重みを、元旦から今日までの10日間でひしひしと感じた次第です。”普通”が一番いいのだなと思っております。メイン会場の中には141社、第2会場と第3会場を合わせると190社のメーカーさまが、2024年モデルの新作を立派に展示されていらっしゃります。昨年の2023年が、この業界にとってはあまり良くなかった年でしたので、今年は力の入れ方がだいぶ違っていると思います。今回の新春展は”最高を、塗り替える。”というテーマをもとに、組合一同頑張って新作を開発しています。お客様の暮らしを豊かにする、暮らしを豊かにするためにデザインされた家具が、一堂に展示されています。バイヤーの皆様は、すみずみまで各会場を見ていただいて、一つでも多く発注していただけるように、よろしくお願い申し上げます」と挨拶。
「2024年問題がまだまだ残っていますが、その点もトラック業界とともに、壁にぶつかっても負けないように、私どもメーカーとしてもできることを一緒になって、問題が少しでも軽減できるように協力して参りたいと思います。販売チャネルもいろんな形で増えていますから、夢と希望をもって、今年はチャレンジの年であります。業界として正念場でございますが、いろんなところにチャレンジして参りたいと思っています」と結んだ。
各会場への来場社/来場者数は、第1会場の大川産業会館が10日:1299社/1470人、11日:549社/723人で、2日間合わせて1848社/2193人(昨年は1800社/2023人)。第2会場のUゾーンが10日:394社/730人、11日:268社/479人で、2日間合計で662社/1209人(同、586社/1013人)。第3会場のエルバーレが10日:412社/722人、11日:266社/488人で、2日間合わせて678社、1210人(同、599社/1020人)。2日間合計の来場者数は、各会場とも前年を上回った。
主催者発表資料によると、メイン会場の大川産業会館への来場者の上位5種別では、トップが「量販店・家具小売業・百貨店」が最も多い1072社/1257人。(昨年は1064社/1220人。2番目が「家具卸業・家具問屋業」で316社/382人(同、285社/306人)。3番目が「資材関連・製造業」で246社/300人(同、213社/227人)。4番目が「通販・インターネットショップ」で219社/283人(同、202社/230人)だった。
来場者の割合で多くを占める「量販店・家具小売業・百貨店」は、昨年比では微増(社数は0.8%増、人数は3%増)。これに対して、今年は家具卸業やインターネットショップ関係の種別の来場社の増加率は、量販店・小売業などと比較して高く、社数及び人数の増加率は家具卸売業・問屋業が10.9%増/24.8%増、インターネットショップが8.4%増/23.0%増)だった。全国からバイヤーが押し寄せる中、こうしたインターネットショップやライフスタイルショップの来場者も徐々に割合を増してきている。
来場者に占める販売店のウェイトはいまだに大きいものの、出展社の中からは「今の時代、置き家具だけを開発しても・・・」といった声や「一つの販売店さんで、椅子一脚の受注だけでは、あまり意味がない」といった声も聞かれた。また、ある出展社は「他の展示会にも出展したいという思いもあるが、現状のアイテムだけでは効果が薄い。異なるジャンルの製品の開発も進めないといけない」と話すなど、現状を変えたいという思いはあれど、いかに他のチャネルに販路を拡大するか、そこに踏み込むことが難しいケースも多いようだ。
このほかでは、高価格帯商品を主に扱ってきた出展社の中にも、リーズナブルな価格帯のものを開発しはじめたメーカーもみられた。反面、安価な価格帯のものを扱ってきたメーカーの中には、高単価な製品開発に着手している企業もみられるなど、出展社によって戦略は様々だ。
出展社の中にはコントラクト向けの製品を参考に展示した企業もみられるなど、現状を打開すべく策を打ち出す企業も出てきている。箱物メーカーが作るテーブルや、チェアメーカーが作るテーブルなど、既存のノウハウを生かしながらも新たな製品開発に着手しようとしているメーカーもみられるなど、新年の業界傾向を示すといわれる大川家具新春展においても、意欲的なチャレンジの姿勢を示す企業が多数見られた。
福岡・大川家具工業会の河口理事長は「今年は、2024年問題の年でもありますが、なるべくコストが上がらないように、多方面で調整していただいています。フェリーやJR貨物を使うなど、配送業者の方々もいろいろと知恵を出してくださっています。これからの時代は、粗利をとれる商材を出していくこと。”大量生産、大量消費”という時代は終わったかな、と思います。資材の価格が下がる、円の価値が高まるという可能性もゼロではありませんが、現実的にはこの現状を見ながら考えていかないといけません。原点に回帰して、”良いものをきちんと売る”ということを心がけていかないといけないでしょう」と語る。
組合としても、大川ブランドの家具の販路を拡大すべく、海外のバイヤーを誘致。今回の新春展にも香港の家具販売店の関係者が来場し、各社のブースを見学する様子が見られた。「香港は、大川としても実績のある海外取引先です。香港側としても、メイドインジャパン、大川ブランドを取り扱いたいということで、海外への輸出展開について、大川市や関係機関などにもプッシュしていただいています」と河口理事長。1月末には海外展開に向けた個別の相談会も実施される予定だという。
なお大川市は、ふるさと納税の返礼品に大川産の家具を設定しており、昨年度の実績は15億400万円だったが、今年度は2023年12月末時点で15億4000万円を集めており、昨年実績をクリアしたとのことだ。「道の駅」と「川の駅」の機能を併せ持つ産業・観光振興拠点「大川の駅」についても、4年後の開業を視野に入れ、令和5年度から「大川リビルディング事業」を開始。その中の柱の一つであるEC関連事業にも注力しており、大川市公式オンラインショップ「大川木工まつり常設展」では、昨年度は8000万円の売上だったが、今年度は昨年12月末時点で1億をこえる売上を計上しているようだ。
地域ぐるみで、製品の販路拡大に取り組む家具産地大川。日本随一の家具産地として、ブランドの発展に期待がかかる。
(佐藤敬広)