――御社は小売店に向け、キャラクターグッズの魅力を訴求されています。家具販売店も、それぞれの店の認知度を高めるうえで、キャラクターグッズを取り扱うことは非常にポテンシャルがあると思いますが、鴻池社長のお考えをお聞かせください。
鴻池 キャラクターグッズは、特定の客層を自店に取り入れることができるという点で、非常に魅力があると思っています。特に近年のキャラクターグッズ市場は拡大傾向にあり、「二世代キャラ」が堅調です。二世代キャラとは、たとえば、母親とその子どもなど、いわゆる団塊の世代ジュニアと言われている人たちとその子どもたちの二世代にわたって愛されるキャラクターのことです。その方々が大体50歳前後で、その子どもたちは大学生ぐらいの年齢層を占めます。この二世代におけるキャラクターグッズの需要は根強いと感じます。
Y2K、2000年前後のいわゆる平成レトロとも言われているジャンルがこれ(二世代キャラ)にあたり、サンリオさんやディズニーさんが人気です。昨今のディズニーランドは、来園者数の約8割が大人だそうで、このような現象の裏付けになっているのではないでしょうか。
したがって、いわゆる家具やホームコーディネートに特化しているようなお店でも、このようなキャラクターグッズによって切り込んでいける可能性があります。子連れでも、お子様が暇にならないという点も面白いのではないでしょうか。そして何より、それぞれのキャラクターが好きな人に販売するということになりますから、それが「付加価値」にもなるわけです。したがって単価も上げやすいですし、その点ホームセンターさんは既にうまくご商売に取り入れておられます。キャラクターグッズの机やソファなど好調と聞いております。
――そのようなキャラクターグッズを購入する人の心理、購買導線について解説をお願いいたします。
鴻池 多くのエンドユーザー様にとって、純粋に「好き」という部分と、「癒される」という2つに集約されるでしょう。また、キャラクターグッズの中には接触頻度が高いものも多いです。ディズニーさんもサンリオさんも子ども用の雑貨を扱っているなど、小さなときからタッチポイントが多いのです。それだけ皆様にとって、「馴染み」があるもので、愛着がわくのだと思います。
例えば、新しくサンリオさんのキャラクターを出したというので、あるお店に行くと、そのキャラクターのファンの方はその製品をめがけて買いに行くケースもあるでしょう。そのために我々もSNSで情報発信を行っています。我々のフォロワーがInstagramで約14万人、その他全部のSNSを合わせて約20万人いるので、その方々に対してスケーターコーナー(編集注:店舗の一角に設ける、スケーターが取り扱うキャラクターグッズを中心としたで構成する販売コーナー)をいただければ、その店舗さんの情報発信をして、店舗誘導をしていこうという取り組みをしています。
キャラクターは今日、本当に多様化してきています。いわゆるファンシー雑貨メーカーのサンエックスさんであるとか、サンリオさんのように、自社のショップでブランディングを行い、それをライセンスアウトするという従来からの王道路線もありますが、現代はテレビや映画、ゲーム、SNS発の漫画やアニメから生まれたキャラクターなど、本当に多様化が進んでいます。
――取引先として、書店やコンビニなどからの引き合いも強いようですね。そのような企業は、店舗でキャラクターグッズを扱うことについて、どのような効果を期待されていると認識されていますか。
鴻池 キャラクターにはトレンドがありますので、旬なキャラクターを扱う事により、トレンドの商品が手に入るということでしょう。また、新たな顧客層の開拓にも繋がるかもしれません。当社の商品を扱っていただいている企業の店舗さんについても、例えばホームセンターなどは来店者数アップに非常に効果があると聞いています。ホームセンターは基本的にDIY用品など、男性側の需要品が中心ですが、キャラクターグッズを取り扱うことでファミリー層や女性層を取り込める点が好評です。従業員の方に喜ばれるという利点もあります。
商品について、トレンドを目指すのであれば、今は「おぱんちゅうさぎ」など、SNS系のキャラクターの人気があります。おそらくこれから人気が出てくるのは、ディズニーさんの映画「ズートピア」のキャラクターでしょうか。このように、トレンドのキャラクターをポンとスポットで取り扱うのも「あり」だと思います。(2025.12.25現在)
あとは、先ほども申したような、サンリオさんやディズニーさんなどの王道系です。いわゆる不変のキャラクターを定番的に展開することも可能だと思います。不変のキャラクターであっても、「周年」といったトレンドがあります。例えば2026年だと、「くまのプーさん」の100周年です。2025年は「スヌーピー」が75周年といったように、周年でそれぞれのキャラクターの露出が上がり、話題性も出てきます。商材の組み合わせなど、当社の営業担当に都度ご用命いただければ、売場づくりなども含めて相談に乗らせていただきます。
――スケーター自体のブランドの認知を広めるために、どのような取り組みをされていますか。
鴻池 まずはSNSの強化です。もう1つは当社のeコマースの強化ですね。あとは、リアル店舗でスケーターのポップアップを積極的展開し、メーカーの名前を出してお客様との接触頻度を上げる取り組みを行っています。小売店さんで当社とお客様とのタッチポイントを増やしつつ、SNSやスケーター公式オンラインショップでさらなるタッチポイントを増やす取り組みを推進しています。
私もよく、様々な会合で多くの方と名刺交換させていただいていますが、その後のお礼のメールなどで大体皆さんおっしゃるのが「家に帰ったらスケーターの弁当箱の製品がいっぱいありました」と。つまり購入したお弁当箱がスケーターの商品であるということを、知らない方が多いわけです。結局のところ、サンリオさんのキャラクターが描いてある弁当箱を買ったら、当社の商品だったというケースが大半で、「スケーターの商品だから、安心安全だし購入する」という方はまだ少ないのが事実です。
ただし、主婦層は当社の存在を認知してくださっている方が多いです。我々が調査したところ、0歳時の母親の方については、当社の認知度は低い。しかしこれが6歳児ぐらいの母親の方になると、スケーターを知っているという方はぐんと増えます。今後は、0歳児の母親の方にもしっかりとスケーターを認知していただけるようにしていきたいですし、もちろん父親の方や、一般の会社員・学生の方など多くの方々にも知っていただけるようにしたいですね。
スケーターでは、CSRに注力している。CSR は経営にどのような意義を与えるのか。また、3代目を担う鴻池社長に、事業継承について訊く
――続いて、少しテーマを変えまして、経営に関するお話を伺っていきたいと思います。スケーターではCSR活動を積極的に行われていますが、この活動の経営的意義についてまずお教えください。
鴻池 コンセプトはまず、スケーターに関わる全員のステークホルダーの幸せを目指すところです。従業員の給料を含めた待遇改善を図り、協力企業に無理な値切りを行わないといった基本行動に加え、企業として社会貢献、地域貢献を考えます。地域のイベントに対して協賛、例えばバスケットのプロチームのスポンサーや、サッカーのプロチームのスポンサー、2024年にはドッジボールの奈良県大会のスポンサーを務めるといった活動に従事しています。
そして今後より取り組んでいきたいのが、認定NPO法人キッズドアとの取り組みです。売上の一部を恵まれない子どもたちに対して寄付をする取り組みです。このような取り組みを通じて、社員や多くの人を幸せにしていくことも大切ですし、今後会社が成長していく中でCSR活動を通して社会貢献にも注力していきたいと考えています、また社員自体もモチベーションは上がると思っていますし、リクルート活動においても非常に重要な取り組みだと考えています。
これは社会的な流れでもあります。例えば、就職活動でも急激に売り手市場になりました。したがって当社がいかに意義のあることをしている企業であるか知って頂く必要性が一層高まりました。また「うちの会社は立派な会社なんだ」と従業員が誇りを持てることで、仕事へのモチベーションや自信にもつながります。今後もさらに強化していきたいです。
また、企業認知度という部分では、「探究学習」の教材に当社のお弁当箱を取り上げていただくという取り組みも、2026年から行っていきます。探求学習とは、新しい学習指導要領として2020年から小学校、21年から中学校でスタートしています。
小・中学校の理科の探究学習の教材に当社のお弁当箱も取り上げていただいています。このような活動を今後2、3年続けていくことで、子どもたちの学びにつながればと思っていますし、企業認知度は確実に上がるでしょう。
もちろんこのほかに、例えばSDGsの観点で、バイオマス樹脂を使用することで環境の負荷を軽減するなども行っていますが、やはりCSRにはいわゆる地域貢献、社会貢献をする意義の方が強いと思っています。
――鴻池社長がご覧になられて、今の若い人達はそのような活動に対して、昔に比べて敏感になってきているとお感じですか。
鴻池 そうですね。敏感になったと思います。そのような教育が進んでいる影響があるのではないでしょうか。そもそもCSRといった言葉は、昔はありませんでしたからね。
――近年御社がCSRに力を入れ始めたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。
鴻池 まずCSR活動自体は、2,3年ほど前から取り組み始めていたのですが、本格的には2026年からになります。先ほどの認定NPO法人キッズドアさんとの寄付イベントの取り組みが、2026年の元旦からスタートするからです。
きっかけはキッズドアさんのプレゼン内容に感銘を受けたからなのですが、今の日本の子どもたちは全体の11%ほどが貧困にあたり、彼らは給食がない夏休みには、十分に物が食べられず栄養が足りなくて痩せてしまうそうです。この日本で、そのような事が起きていることに私は衝撃を受けました。
この活動に賛同したのは、このような足元の生活支援はもちろん大事なのですが、一番の根本は貧困層になると、適切な教育を受けることができず、それにより貧困層の方はずっと貧困層になり続けるという、負の連鎖が起きていると聞いたためです。解決するためには、大学に行けるレベルの教育を施す必要があります。日本の恵まれない子どもたちを助けていかないといけません。これが日本の国力の復活にも繋がっていくと私は考えたからなのです。
――ありがとうございます。続きまして、事業承継についてお聞きできればと思います。
鴻池 まず前提として、私は3代目になります。祖父が起業して、父が中興の祖となり、売上高2億円の会社を100億円以上にしていきました。今は160億円の規模に成長することができました。私は2017年で社長に就任して8年目となりました。2017年に就任したのち、2024年まで二代表体制を継続し、2025年に一代表体制になりました。
2017年に代表取締役社長にはなったものの、会長としても、やはり自身も主導権を持っておきたいという考えが当然あったので、結局一代表体制になるまで7年がかかったということです。余裕をもって計画的に行わないと、不慮の事故等で突然不幸が起きては大変なので、ある程度時間をかけて権限移譲を行っていきました。
――そこには困難な点も多かったと推察します。どのような点でしたか。
鴻池 事業承継で最も難しいのは、少しずつ先代に引退の心構えをしていただくという点です。これは時間を要する事柄です。当社の場合は、資産管理を担うフローリアムという会社があり、ここがスケーターの不動産、固定資産を全て所有しています。はじめのステップとして、ここが少しずつ株式を買い取ることからスタートしました。現会長が保有していた個人株を、フローリアムの法人所有にしていくということです。
当社はここ数年業績が非常に良く、株価がどんどん上がっていってしまって、(一定額で買い進めると結果的に)株がなかなか減らないのです。銀行から融資して買い取りにあててもなかなか減りませんでした。最終的には事業承継特例税制を利用し、会長の残りの株を全て私が保有することになりました。
このように、難しいのは資金調達ももちろんですが、実際に先代が「引退」を決意することも簡単なことではありません。オーナー企業というのは「会社イコール自分」ですから、並みならぬ愛着があります。したがって当然、引退を決意する、もしくは引退するために株を息子にあげる、もしくは売るというのも、やはり当人としては簡単にできることではないと思います。
特に、保有する株式が全体の3割を下回る時は、決定権の消失を伴いますから、大きなボーダーラインに感じるようです。今回、その決断には先代としても相当な葛藤があったと思います。
これは時間をかけて説得していくしかありません。当社の場合説得の鍵となったのは、「業績が好調に推移してきた」という事実でした。どのような経営者も、「もう息子に任せて大丈夫」と思えないと引き際が見えづらくなり、引退を考えにくくなります。承継には「説得」と「堅調な業績」。この2つです。好業績時には株価が高まりますが、金融機関の条件も自然とよくなります。
――そうすると、どちらかというと2代目から3代目の社長へ移行されるときは、鴻池社長が主導されたということですか。
鴻池 税理士と相談の上で進めました。株に関係する税金面など、様々なリスクヘッジも必要ですからね。父は健康なので計画的に進めることはできましたが、場合によってはある日突然倒れてしまうというケースもありますし、最悪のケースでは現金がないと相続に困難が伴います。そうならないためにも計画的に早め早めに進めることが重要だと感じました。ただ、最後は一気に行かないといけない。先ほども申したように、株式の保有比率が30パーセントを割り込むことについては、やはり心理的障壁がありますから。
「継ぎたい会社」というのは業績がいいので、株価が高い。しかし「継ぎたくない会社」というものは株価が安くて税金もそれほどの額ではないけれど、やはり継ぎにくいものです。こう考えると、業績が良いことが一番大事なのかなと思いますね。それは、先代である父を安心させられるということでもありますから。
――仮に業績が悪かったとしたら、事業承継は難しかったと思われますか。
鴻池 税金の問題が解消されるという点では、ある側面では簡単だとは思います。しかし、業績が悪いということは会社が変わらないとダメということですから、「今までのやり方はダメ、だから業績が悪いのだ」と、先代のやり方を否定しないといけないですから、ここが大変ではないでしょうか。そこで決定的に仲が悪くなってしまうケースは少なくないと思います。当社においても、もし業績が悪かったらそうなったかもしれません。その場合、粘り強いコミュニケーションが必要だったと思います。私の場合は、全否定するということはなかったので、やりやすかったと言えます。
――承継するにあたり、いわゆる仕事面で難しさを感じた事はあったのでしょうか。
鴻池 仕事上の難しさはそこまでありませんでした。2017年に社長を継いで以降、売上高を40億円以上増加させることができました。販路も広がってきています。私が当社へ入社したのが2002年で、その当時の売上高は約70億円ほどでしたから、現在はその倍以上に拡大しています。私自身とともに、会社も大きくなってきていますし、社内のこともよくわかった上での社長就任でしたから、大きく困ったことはありませんでした。
――経営者同士、息子と父の関係ですが、仲の方はいかがでしょうか。
鴻池 父との仲はずっと良いです。基本的にどんなことでも実行させてくれましたからね。繰り返しになりますが何よりも、「業績が良いこと」というのが一番です。当社でもコロナ禍の1年目には業績が下がりましたが、その時には意見の相違が生まれました。やはり繰り返しになりますが「業績が良いこと」が最も大切な事になります。あと、父はどちらかと言うと企画開発の分野を主としていましたから、営業である私とのすみ分けもできていました。このような分業制を敷いていると比較的スムーズかと思います。
――続いての質問ですが、社員に全力で仕事に取り組んでもらうために、どのような取り組みを意識されているのでしょうか。
鴻池 まず、直近の取り組みとしては奈良の本社は築30年以上と古く、昔の造りなので、廊下などが寒いのです。そこを全館空調に変えている最中です。トイレも綺麗に改装しており、これが社員から評判が良いですね。このような職場環境の整備を行っています。
そして、何よりも一番大切なのは、待遇改善だと思います。給料を増やすことです。特にボーナス、決算、賞与、利益が出たらしっかり還元する。休みについても、それまでの約20年、土曜日は月に1回出勤としていたのですが、2024年から完全週休2日制プラス祝日休みを導入しました。
その他、朝礼を通じて皆が取り組んでいる仕事の意義の再共有や先ほども説明した、CSRもこれにあたると考えます。
――その中から1つ、とりわけ社員のコミットメントを高めたと感じる取り組みを選ぶとしたらどれでしょうか。
鴻池 給料を上げたことが1番ですね。特に決算賞与です。決算賞与もここ数年ずっと出しています。したがって、利益を会社だけが独占して内部留保をどんどん貯めていく、ということはなるべくしないようにと考えています。
そして業績が良いと、会社の規模は大きくなり、それに伴い部署も増えます。すると部長のポジションも当然増えますし、部長が増えれば本部長のポジションも出てきますから、昇進しやすくなるということになります。
――最後に、2026年以降の経営の展望などをお伺いできますか。
鴻池 成長戦略を続けていく上で、中期計画では5年後(インタビューは2025年12月に実施したため、ここでは2030年を指す)に売上200億達成という目標を掲げています。CSRにもしっかり取り組み、より優秀な人材を獲得していくほか、QCD(クオリティ、コスト、デリバリー)の3要素を改めて徹底的に見直していきます。これまでは(キャラクターグッズではない弁当箱などの)レッドオーシャン市場に参入していませんでしたが、売上を拡大する上でも参入は避けられません。これまで以上に価格と品質に信頼を持っていただける、真のファブレスメーカーを目指していきます。
――お忙しい中、貴重なお話を多々いただきました。ありがとうございました。
(聞き手 長澤貴之)






