~時代和家具を今に伝える三代目(下)~ アンティーク山本商店 代表 山本明弘氏 (“Antique-Yamamoto” Owner Akihiro Yamamoto) 

上より続き

「家具を手放すお客様の想い」と「ご購入いただくお客様の想い」の橋渡し

――何年も通われるお客様も多いということですね。

山本 お得意様の中には、父の代から通ってくださっているお客様もいらっしゃいます。家具というものは、一般的には部屋の中に10点や20点もあれば十分なものですよね。当店では壊れないように修理もして、一度買ったら長年使ってもらえるものが多いですが、それにも関わらず足しげく通って下さるお客様の存在は本当に嬉しい限りです。以前当店で買っていただいた家具を、再び当店でお買取りして、また新たな家具を購入していただくことも多いんですよ。

――家具により投資し長く愛用する人が、いかに多くいるかということですね。

山本 日本人の今までの歴史や生活のスタイルとして、家具にお金をかけたりこだわりがあったりという人は、他に所持していらっしゃる物についても、良い物が多いのです。衣食住で様々なところにお金を使いますが、皆さん最後は家具に行き着くらしいのです。長く家具を使いつつ、家具をレベルアップさせながら買い替える文化がまだ日本にはないので、その文化が根付いてくれれば良いなと思います。

――そのように、何年も家具を使い、そして足しげく通われているお客様以外では、他にどのような層の方が来店されるのでしょうか。

山本 実は、比較的若い女性のお客様も多いのですよ。父の代から全体の7割くらいが20代~40代前半の女性なのです。恐らくその年代の人々は、和家具というものは祖父母の家に行ったら在ったというぐらいの存在でしかなく、あまり身近には無かった世代だと思うのです。だから、逆に古い物を新しく感じ、新鮮だと仰るお客様もいました。「かわいい」と仰る方も多くて・・私の感覚では「家具がかわいい!?」と思ってしまうのですが・・(笑)

――その年代の女性というものは、家具の「機能性」より「芸術性」というものを求める人が多いということでしょうか。

山本 そうですね。私は祖父や父に、「家具の値段を付けるために、年代と材料と職人の手がどれだけ込んでいるかを知っておくこと」を徹底的に教わったんです。しかし、若い年代の方は、私のうんちくやマニアックな話はそんなに・・・という感じなのですが、一目商品見た瞬間に「これかわいい、欲しい」と仰る方が多いのです。

――家具の個性で買うかどうかを判断しているということですかね。

山本 「一目で見抜く力」が強いのだと思います。どんなに綺麗な木目なのか、どんな構造をしているかなどを説明しなくても、「センスが良い物」をお選びになるんですよ。

――日本人の家具に対する感性が、次第に変わってきている面はあると思いますね。

山本 若い世代のお客様はご自身のセンスと第一印象で判断なさっているので、その違いは感じます。昔だと、私が商品説明をすると、それがお客様の心に響いてご購入いただいていました。ご年配の方は材料や木目にこだわりますが、若い方はそこにこだわりがない印象ですね。

――少し話は変わりますが、山本商店では店頭での販売だけでなく、インターネットでも販売されていますね

山本 特にこのご時世で緊急事態宣言が発出されたときに、インターネットの方にシフトしていこうと話があがりました。私はアナログな人間なので、インターネットでの販売は悩みましたね。やはりアンティークというものは、実際に見た時の本物の迫力というものがあるんですよ。それはどんな精巧なデジカメで撮ったり編集したりしても、なかなか伝えきれないものがあるのです。だから私としては少し否定的だったのですが、このコロナ禍の中、店頭で商品を販売して「ご来店お待ちしています」とは、当分の間は言えないよ、という話に落ち着いて。それなら、スタッフ一丸となってインターネットの方にも力を注いでいこうとなりました。今は毎週金曜日に更新して、約30アイテムを販売しています。

――色々な葛藤があったのですね。反響などはいかがでしたか?

山本 北海道から沖縄まで全国からありました。メディアやインターネットを通じて、「欲しいんだけど、どこで買ったら良いのか分からない」というお客様が、世の中には大勢いらっしゃるんだと、強く思いましたね。

――確かに、和家具を売っている店舗というものは少ないです。実物の家具を見ずにご購入される方も多いのでしょうか。

山本 多いですね。でもそれは、山本商店としての会社の歴史であったり、取り組んできたことの積み重ねだったりを、お客様にご評価いただけているんだなと、理解しております。

――やはり山本さんとしては、実物を見てもらいたいと思われるのでしょうか。

山本 それは思いますね。ですが、ネットでご購入いただいた方やお得意様も何度もご購入いただいているので、前回買って良かったのだろうなと思っています。店での売り上げには及ばないのですが、インターネットも徐々に主流にはなっていますね。ただ、撮影して編集する商品数というものは少ないので、やはり多くの商品に出会っていただくためにも、店舗に足を運んでいただきたいです。

【現代の家具と和家具】

――山本さんから見て、現代の家具と昔の家具で、根本的にどのような点が異なると感じていらっしゃりますか。

山本 山本商店が仕入れをする商品の線引きでもあるのですが、「直しながら使い続けることを前提に作られた家具」と「壊れたら捨てて買い替えなければならない家具」だと思ってます。山本商店は、前者の家具しか仕入れないのですよ。山本商店で購入された家具をお客様が壊してしまった時に、「それは直せませんから処分してください」とは、絶対に言いたくないのです。

現代の大量生産の家具は、見た目も色も揃っていてとても綺麗なのですが、そのほとんどは「壊れたら新しいのに買い替えないといけない」と思うんです。逆に和家具は、「直しながら使い続けること」を前提に職人が作っているので耐久性に優れている、その違いはとても感じます。

――時代の流れと共に、「直せる家具」というものは減ってきているのでしょうか、

山本 その通りだと思います。ざっくりとですが、だいたい昭和30年代までのものは「直せる家具」なんです。しかし昭和40年代以降は、量販店で売られているような家具だと、直しはほとんどできないのです。だからこそ、日本の職人の真面目さだったり、ちょっとした遊び心、丁寧さや繊細さだったりをもう一度見直していただければ、和家具に振り向いてくれる人も多いのではないかと思いますね。

――現代は家具の作り方そのものが、変わってしまったというわけですね。

山本 大量生産で、作りが粗悪になっているものが多いんです。例えば、化粧合板の張りの家具は、見た目は綺麗なのですが、ネジは永遠に回りますし、釘を打っても手で抜けてしまうんです。一枚板の家具であれば、同じ材料で木目を合わせて修理が出来るのですが、大量生産の物は欠けてしまったら修理ができないのです。しかしながら、例えば松本民芸家具や北海道民芸家具といった民芸家具などのブランドのメーカーさんは、現代家具の中でも職人の方の手でしっかりと作られています。当店でも取り扱っていますね。

――山本商店で扱っている家具で一番古い物はいつ頃作られたものになるのでしょうか。

山本 一番古い物だと、明治初期の階段箪笥ですね。「総欅の蔵階段」と呼ばれており、本当に階段として使われていたもののようです。他には200年以上前の幕末の刀箪笥もあります。

あと、今まで仕入れてきた中でこれは本当に良いものだったなという家具がありまして、それが総欅のちゃぶ台でした。店頭には置かずに事務所にずっと置いていたのですが、ある時事務所に来られた方に「どうしても欲しいから」と言われて販売したことが、実は今でも悔やんでいます。こればかりは出会いと別れみたいなものですね。

――お店でも出会いと別れのようなエピソードはあるのでしょうか。

山本 お客様のケースでもありましたね。同じ家具を2人の方が欲しいと仰って、最終的にじゃんけんで決められたんです。負けたお客様は「自分とは縁が無かった」とご納得してくれました。

やはり一点ものなので、購入しようか悩んでいるお客様には「ご縁だと思いますよ」と声をかけるようにしているのです。でも不思議なもので、「次来たときには、もう少し良い物があるかもしれない」と考えて購入を見送るお客様は、意外とあまり良い物に出会えていないような印象なのです。アンティークは「インスピレーション」で決めないと、なかなか良い物に辿り着けないところがあるんです。

あとは、最近ある1軒のお宅から、10点程仕入れがあったのですが、それを職人が全部直して、店内の3フロアにバラバラに置いたのです。ある日一人の女性のお客様がご来店されて、当店で5点をご購入いただいたのですが、なんとそれが先日仕入れた10点中5点だったのです。

――家具に惹かれる感性が似た方を、家具が繋いだというわけですね。

山本 山本商店のこの仕事は、「家具を手放すお客様の想い」と「ご購入いただくお客様の想い」の橋渡しの役割をしているのです。「山本さんのところで直して、次にこれを欲しい方に渡してほしい」とお客様は手放して、その家具を欲しい方がご来店される。物と物が人を繋いでいくような場面を目の当たりにすると、とても感動します。「物が人を呼んでいるんだな」と。

――今後の日本メーカーにも、代々受け継がれる家具をこれからも作ってほしいと思いますね。

山本 大量生産で壊れたら廃棄し続けるのではなくて、日本人の昔から継承されてきたことをもう一度見直して頂いてほしいと思います。家具ご購入いただくお客様も、その方がコスパは良いと思うのです。

――約30年和家具を扱う山本さんが思う和家具の魅力とは何でしょうか。

山本 和家具は、現代で同じ材料で同じ値段で作らせても絶対に同じクオリティーでは作れないんです。それほどクオリティーが高いものを、リーズナブルに売ることができるのが和家具の魅力だと思います。

――山本商店としての今後の展望をお聞かせください。

山本 お客様と接していて感じるのは、アンティークは「0か100か」しかないのです。「物凄く好きな人」か「全く興味が無い人」のどちらか。和家具と一緒に生活されている方は、「家具と一緒に過ごしていると癒される」、「仕事から帰宅することや友達を家に呼ぶことが楽しみになる」と仰っていて、精神的に豊かな生活をされていたんです。

一方で、興味の無い人は全く興味が無いのです。だからこれは私の展望であり課題ですが、「興味が無い人や知らない人に振り向いてもらい、知っていただくこと」ですね。クオリティーが高い和家具がリーズナブルに売られていて、例えば昭和初期の小さな引き出しも3、4000円で売っています。そのような物を一つ部屋に置くだけでも、部屋の雰囲気は大きく変わるんですよ。本物のアンティークの温もりというものを、是非感じていただきたいと思います。

――最後に、初代二代目と山本商店を継いで来られ、今後もさらに和家具の良さを広め続けていくために、大切にしていきたいことはありますか。

山本 全てに繋がることですが、「扱っている商品を大事にすること」、「お客様を大事にすること」、そして「働いているスタッフを大事にすること」、この3つは貫き通していきたいです。この3つを大事にしていれば、必然的に数字も着いてくると思うのです。ひとりひとりのお客様と、一点一点の商品としっかり向き合ってこれからも息の長い経営を続けていきたいです。

――本日はお忙しい中ありがとうございました。和家具という、長く人々に愛されてきた家具についてや、これからの家具の在り方について、新たな視点を教示していただけました。三代目として、今後もさらに日本の社会に対して貢献・ご活躍されることを願っています。

アンティーク山本商店

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