――まず、昨年の飛騨木工連合会としての活動について、振り返りと総括を語っていただけますか。語っていただけますか。
白川 昨年の飛騨の家具フェスティバルについては、「心の豊かさ」をテーマにしっかりと開催することができたと考えています。ただ、来場者数は前年と比べると若干減少しました。この理由は、「秋の高山祭」などの観光シーズンのピークと開催期間が重なってしまい、高山周辺の宿泊施設の予約ができない企業が多くいらっしゃったことが一因でした。通常だと10人規模で高山にいらっしゃる取引先なども、人数を絞られて来られました。また、宿泊費も依然と比較してかなり高くなっていました。したがって、来場者数は減っているのですが、来場された企業数で見れば微減といった結果でした。しかしながら、このような事態も起こってしまったことで、やはり開催時期を見直さなければといった話が組合内でもありました。
――来季の飛騨の家具フェスティバルは、日本の家具産地の見本市の中で、どのような位置づけでの開催となるのでしょうか。
白川 2025年の飛騨の家具フェスティバルについては、昨年まで開催していた東京国際家具見本市(IFFT)の刷新にあわせ、新たに会期を設定しなおしての開催を予定しています。
まずIFFTの話になりますが、2025年は刷新して実施するということで、まだ見本市の正式な名称は決まっていませんが、全国の家具産地のオープンファクトリーツアーを設ける、といったものが中心になっていくことになると思います。
これまでのIFFTは、他の見本市とジョイントしながらの開催でしたが、コロナ禍が明けた一昨年や昨年の開催の様子をふまえ、展示会の在り方を考え直さなければならないということで、新しい形での開催を予定しています。日本家具産業振興会のメンバーなど、IFFTを大切にしていかなくてはいけないという思いは強くありましたが、しかしながらIFFTに限らず、世界4大家具展示会とよばれるミラノサローネ、ケルンメッセ、ハイポイントマーケット、メゾン・エ・オブジェは、出展者が激減しており、全世界的に家具見本市は来場者数が下火になってきています。来場者を一か所に集めるという展示会の在り方について、少し考え直す時期に来ていると思います。
現在、日本の主要な家具産地である旭川、静岡、大川の各産地展が6月と7月に集中して開かれています。したがって、我々飛騨木工連の飛騨の家具フェスティバルも、その時期に会期を移せば、新IFFTの全体の企画もしやすくなるという考えから、新たな「2025 飛騨の家具フェスティバル」は、会期を夏に設定し、2025年7月2日(水)~6日(日)で実施する予定です。
新IFFTの在り方については様々な意見があり、会期を東京で開かれるデザインイベントに合わせるべきではという意見もありました。しかし我々は家具メーカーが主体ですから、東京中心のイベントでは恐らく今までと変わらない話になってしまうでしょう。我々はやはり、製造現場の現状や、伝統文化なども全て含めて見ていただく、そのような展示会にしていかなくてはいけないということ、オープンファクトリツアーを主としたイベントにしていきたいということですね。
――2025年は大阪・関西万博も開催される予定ですが、この会期中でのイベントということですね。
白川 万博を見に海外から日本に来られる方々も含め、バイヤーの集計などについても新IFFTのデータベースに集約して情報共有していくことも可能です。そのようなノウハウを蓄積しながら 伸ばしていこうということですね。
――それでは、「2025 飛騨の家具フェスティバル」については、大きくその中身を変えることになるのでしょうか。
白川 いえ、基本的な構成はこれまでと大きく変えることはしません。しかしながら、会期変更にともない、大きく2回に分けるという考えです。一つは本開催で当組合が主催する飛騨の家具フェスティバル。もう一つは、秋に開催される「飛騨・美濃文化産業フェスティバル」との共催です。「飛騨・美濃文化産業フェスティバル」は、飛騨の家具フェスティバルのメイン会場である飛騨・世界生活文化センターの活用推進協議会が主催となっており、そのフェスティバルはどちらかといえば地元の方々向けの催しです。ここで、匠DNA展、飛騨の家具絵画コンクールや、飛騨つくり手市などの展示を行いたいと考えています。新たな夏の飛騨の家具フェスティバルの会期には間に合わないような取り組みを、秋の「飛騨・美濃文化産業フェスティバル」で実施していくということです。
飛騨の家具フェスティバルの話に戻りますが、2025年の開催テーマは飛騨デザイン憲章第4条の「伝統を生かす」となります。メイン会場である飛騨・世界生活文化センターで、新作の家具展示会、ふれあいパーティー、セミナー、トークショーを実施する予定です。コンベンションホールを中心に、木工連加盟の各社ショールームでも開催したいと考えています。これまでもセミナー等を多く開催しており、これは継続して実施しますが、テーマブースは設けない方針です。
――コンベンションホール向かいの「ミュージアム飛騨」も強化されるということですね。
白川 「ミュージアム飛騨」は常設展示で、フェスティバル期間中は無料開放しておりますが、この空間を強化し、「伝統を活かす」ということで伝統文化をしっかりと知っていただきながら、新作の家具を見ていただけるような形にしていきたいと考えています。
2024 飛騨の家具フェスティバル開催 高品質の飛騨高山製品をアピール
――セミナー等では、国産材の活用などについても積極的に発信されていますが、こちらの進捗はいかがですか。
白川 これについては、岐阜県や高山市、飛騨市の担当者の方々が熱心に動いてくださっています。我々が地域の国産材を使いやすくしていく、その環境を整えていくということで、意見調整はほぼできている段階です。昨年の12月にも、岐阜県森林組合連合会さんが主催で「広葉樹祭り」が開催されました。木工連に加盟するメーカーなどがその競りに参加しています。
飛騨の森林について、伐採現場を約60名で視察するという取り組みも行っています。参加者は川上(林業)・川中(製材)・川下(製造)が全て集まり、どのような材が使えるかなどの検討を実地調査しました。このような取り組みもどんどん進んできています。岐阜県の大森康宏副知事にも現状を理解していただくためにご挨拶に伺いましたし、同じく河合孝憲副知事は高山に来てくださり、現地の様子をその目で見ていただきました。昨年の11月には、岐阜県が推進する「ぎふ木育」の拠点である「ぎふ木遊館」のサテライト施設「ひだ木遊館 木っずテラス」がオープンしました。オープニングセレモニーには高山市の田中明市長や、岐阜県の河合副知事などの関係者約100名が出席されました。高山市の近隣でも、飛騨市の都竹淳也市長なども我々の取り組みに賛同してくださっており、このような地元の材料を使いながらでサステナブルな環境を作っていくことを、組合全体としてさらに推進していく予定です。
――家具産地飛騨高山として、家具作りを通した地域振興などについて、どのようにアプローチしていきたいとお考えですか。
白川 やはり、エンドユーザーの方々に、我々のこのような取り組みをきちんと発信していかなければいけないと思っています。このような地元の国産材を使っていくことの意味は、先ほど申した中でのいわゆる「川中」にあたる製材業者の方々が疲弊されているからです。伐採してから製材品になり、乾燥させるなど、およそ2年のスパンをかけていかなくてはいけない。したがって、川下の我々メーカーなどが、そのような材をきちんと使っていくという意思表示、宣言をしないと、川中の製材業者さんも復活していくことができません。
特に高山市は、2005年に近隣の9町村と広域合併し、森林率が約9割と、日本随一の森林を有する市になりました。しかしながら、広葉樹の製材を行うことができる業者さんは高山に2社しかありません。したがって、製材業者さんを再生するためには、やはりしっかりと材を使っていく、お金を使うということを行っていかないと、業者さんも本気にはなれません。取り組みの発信をより強化していこうと考えています。
――その情報の発信は、飛騨の家具フェスティバルなどの催事を中心に行われるのですか。
白川 飛騨の家具フェスティバルのほか、飛騨木工連に加盟するメーカー各社でですね。もちろん加盟企業それぞれで考えはありますので、取り組む企業はどんどんとやっていただく。当社も昨年の飛騨の家具フェスティバルの会期に合わせてショールームをリニューアルし、日本各地の県産材を使用した「NIPPON COLLECTION」シリーズの展示を新たに始めました。小冊子も配布するなど、力を入れている取り組みの一つとなっています。
――全国各地で、国産材の活用が広がりを見せ始めている感があります。
白川 我々も10数年前から、旭川とともに国産材活用の取り組みを続けてきました。北海道は大きな製材業者さんがあり、しっかりと管理されていますよね。カンディハウスさんなどは、国産材比率が7割以上とのことですが、我々はまだその域には達していません。すべての製品を国産材で製造するという域までは難しいですが、3割から4割、できれば5割ほどを占めるまでに国産材を使っていきたいですね。エンドユーザーの皆さんは、「飛騨の家具は飛騨の木で作られている」という認識でいらっしゃりますから、正しい理解を推進するためにも、しっかりとした情報発信に注力したいと考えています。
もちろん、これまでも用いてきたアメリカ産広葉樹なども、しっかりとした高品質の材料ですから、それと国産材をうまくミックスさせた製品開発に取り組んでいきたいと思います。我々飛騨高山の産地は、豊富な森林資源を持っていますから、川上の方たちの想いもしっかりと受け止めつつ、川中の製材業者さんをしっかりと再生させていけるよう、川下の我々メーカーがしっかりと活用に取り組んでいくことが、最も重要だと考えています。
――最後に、新年の抱負、展望等を語っていただけますか。
白川 2025年は、新しい形の新IFFTとジョイントした形で、各産地やメーカーに相乗効果が出るような形で進めていきたいですね。新たな形でのスタートを失敗するわけにはいかないという、強い思いでいます。飛騨の家具フェスティバルについても、時期を変えてでも取り組んでいきたいということで、是非期待していただきたいと思っています。
――お忙しい中、貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。